トランプ米大統領選出後、米政権との関係を修復したいとのロシア側の希望に対してトランプ政権の国防長官は16日、現在のところロシアとの軍事協力の可能性は考えてないと述べた。シリアにおけるISに対する米国とロシア軍の間の重要な協力はしばらくありそうにないことを、この発言でトランプ政権は最も強く示唆している。ISの軍隊に対する共同行動の可能性を大統領選挙運動中にトランプ米大統領が繰り返し提案したにもかかわらずこの発言は行われた。ジム・マティス米国防長官はブリュッセルのNATO本部での会談後、記者団に対し、「軍事レベルで協力する立場にはないが、私たちの政治指導者たちは共通の場を見つけることに努めている」、「ロシアが米国の民主主義の選挙に干渉していることに米国は懸念している」と述べた。
マティス米国防長官の会談の数時間前、ウラジミール・プーチン露大統領は、両国の諜報機関の間で意思疎通を復活することは両国の利益になると述べた。ロシア連邦保安庁(FSB)に対してプーチン露大統領は「テロ対策の分野では、関連するすべての政府と国際機関が協力しなければならないことは絶対に明らかだ」と述べた。しかし、米国の諜報機関は、昨年11月8日の米大統領選挙でトランプ米大統領を勝たせるために、プーチン政権が米民主党の電子メールをハッキングして漏洩させたと結論づけ、トランプ米政権へのプーチン政権の関与に対して最も強力な警戒感を示している。
プーチン政権から、ロシアとの良好な関係を主導しているとみられていたマイケル・フリン米国家安全保障問題担当大統領補佐官の2月13日の辞任は、プーチン政権にとって米国と和解に至るのが難しいことを強調している。フリン米大統領補佐官は、トランプ氏が米大統領就任前にロシアに対する米国の制裁について駐米ロシア大使と会談したこと、またその後、この会談内容についてマイク・ペンス米副大統領を欺いたことを明らかにした後、辞任した。
マティス米国防長官はロシアが米国大統領選挙に干渉したと考えているかどうか聞かれて、「現在のところ、ロシアがいくつかの民主主義の選挙に干渉するか干渉しようとしていたかとの疑いはほとんどない」と述べた。彼ははっきりとは米国の選挙とは言わなかった。トランプ米大統領とプーチン露大統領の首脳会談の可能性に進展が無いとプーチン政権の大統領補佐官は述べた。「首脳会談や明確な理解についてもまだ合意できていないない」とユーリ・ウスチャコフ大統領補佐官が述べたと「インターファクス通信」は報じている。
行ったり来たり
NATOの同盟関係を壊そうとするロシアをかねてから非難してきたマティス米国防長官は、2月15日のNATOの非公開の会合で、プーチン政権との協力関係を復活させる可能性について現実的な対応が必要だと述べた。マティス米国防長官はプーチン政権による2014年のウクライナからのクリミア併合について言及し、冷戦後の米国とロシアとの関係を低水準に急落させたと語った。マティス米国防長官は、NATOに軍事支出を強化するよう呼びかけ、「力の立場から交渉する」必要があると述べた。これに対してロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はただちに返答した。「強硬な形でロシアとの対話を試みても無駄となるだろう」と述べたと「タス通信」は引用している。マティス米国防長官は、「私はロシアの声明に全く返答する必要は無い。NATOは常に、軍事力、民主主義を守ること、そして自由を子孫に伝えるために戦ってきた。」と述べた。
レックス・ティラーソン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相がドイツで会談し、米海兵隊大将で米統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォードがアゼルバイジャンでバレリー・ジゲラシモフロシア軍参謀と会談するなど動きがあわただしくなった。ラブロフ露外相は米大統領選挙に関する騒ぎを一蹴した。「ロシアは他国の国内問題に干渉しないことを米国は知っておくべきだ」と述べた。
機密文書へアクセスするために米議会の調査官が諜報機関や法執行機関に迫るにつれ、米大統領選挙へのロシアによる干渉の疑いに対する米議会での質問が勢いを増している。FBIと米国のいくつかの諜報機関は、米国におけるロシアのスパイ活動を調査中だ。彼らはまた、ロシアの諜報機関の職員などやプーチン政権関係者と、トランプ大統領関連の人物や米大統領選期間中の関係者の間でロシアとの契約が無いか調査している。
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