ヒマラヤ山脈にある世界最高峰のエベレストは、僅かながら年間数ミリずつ標高が高くなっている。これまではプレートテクトニクス(注後記)によるものとされてきたが、英国地球科学専門誌がこの程、地下の高温の液体マントルからの強い圧力によるものだとする新設を唱える研究論文を掲載している。
10月1日付
『BBCニュース』、
『ジ・インディペンデント』紙は、直近の地球科学専門誌が、エベレストの標高が年々上昇している地質学上の新たな理由を解明したとする研究論文を掲載していると報じた。
9月30日発行の英国査読科学月刊誌『ネイチャー・ジオサイエンス』(2008年創刊)は、エベレストの標高が年々高くなる理由の新説を唱える研究論文を掲載した。
エベレストは2020年、正式な標高が8,848.86mと認定されているが、年々2mm程度標高が高くなっていて、それはプレートテクトニクスによるものだと説明されてきていた。...
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10月1日付
『BBCニュース』、
『ジ・インディペンデント』紙は、直近の地球科学専門誌が、エベレストの標高が年々上昇している地質学上の新たな理由を解明したとする研究論文を掲載していると報じた。
9月30日発行の英国査読科学月刊誌『ネイチャー・ジオサイエンス』(2008年創刊)は、エベレストの標高が年々高くなる理由の新説を唱える研究論文を掲載した。
エベレストは2020年、正式な標高が8,848.86mと認定されているが、年々2mm程度標高が高くなっていて、それはプレートテクトニクスによるものだと説明されてきていた。
しかし、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL、1826年創立の国立大学)の地球科学研究グループが同月刊誌に投稿した研究論文によると、従来のプレートテクトニクスだけでなく、エベレストの東側を流れる川が長い間に渓谷を大きく削った浸食による力も加わったためだとしている。
すなわち、この浸食によって地殻の一部が質量を失い、地下の高温の液体マントルからの強い圧力によってエベレストを押し上げた隆起によるものだとする、地殻均衡リバウンド説を唱えている。
同論文によると、当該浸食が8万9千年の間に特に激しくなり、エベレストはその間に15~50m隆起したと推定されるという。
研究に関わった科学者の説明は以下のとおり。
●アダム・スミス博士
・エベレストの75km東側を流れるアルン川が、8万9千年前に他の川と合流して大きな落差のある南方に流れを変えて、高水量とともに浸食力を増大したために多くの土砂・堆積物が削り取られて流失。
・長期にわたって流された土砂・堆積物は何十億トンと推定され、その質量喪失によって地下の液体マントルによる上方への圧力が増して地殻均衡リバウンドが発生。
●マシュー・フォックス博士
・当該浸食が激しくなった8万9千年の間の隆起は15~50mと推定されるが、現在では全地球無線測位システム(GPS)によって、年間約2mm隆起していることが確認可能。
(注)プレートテクトニクス:1960年代後半以降に発展した地球科学の学説。地球の表面を覆う何枚かのプレートが、互いに動くことで大陸移動等が引き起こされるとするもので、この理論の下、エベレストは年間数ミリずつ標高が高くなっていると説明。
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