欧州委員会(EC、1950年設立のEU政策執行機関)はこの程、6月中旬に公表した素案どおり、政府補助金による不当廉売を行っているとして中国製EVに17.4~37.6%の追加関税を賦課すると発表した。ただ、中国側の報復関税を恐れて、あくまで暫定的なものとしており、米政府が予定している100%関税賦課案に比べて遥かに低い。
7月4日付
『BBCニュース』、5日付
『ロイター通信』等は、ECがこの程、当初予定どおり中国製EVに7月5日以降追加関税を賦課すると発表したと詳報している。
ECのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(65歳、2019年就任、元ドイツ国防相)は7月4日、当初予定どおり、7月5日以降EUに輸入される中国製EVに対して、17.4~37.6%の追加関税を賦課する旨発表した。
この追加関税は、元々の関税10%に付加されるものだが、今後とも貿易関係是正のための関係者間交渉が続けられるので、暫定的措置だとも付言している。...
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7月4日付
『BBCニュース』、5日付
『ロイター通信』等は、ECがこの程、当初予定どおり中国製EVに7月5日以降追加関税を賦課すると発表したと詳報している。
ECのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(65歳、2019年就任、元ドイツ国防相)は7月4日、当初予定どおり、7月5日以降EUに輸入される中国製EVに対して、17.4~37.6%の追加関税を賦課する旨発表した。
この追加関税は、元々の関税10%に付加されるものだが、今後とも貿易関係是正のための関係者間交渉が続けられるので、暫定的措置だとも付言している。
EUとしては、中国側が例えばコニャックや豚肉等EU産品に対して報復関税をかけてくることを恐れて、あくまで協議は継続されると強調している。
すなわち、ECのバルディス・ドンブロウスキス副委員長(52歳、2016年より金融・資本市場同盟担当、元ラトビア首相)は、“今回の決定は、あくまで(政府補助金による不当廉売等の)不適切競争の是正である”とした上で、“今後も中国側との交渉は継続されるため、双方にメリットとなる解決策が合意されれば、当該追加関税の適用がなくなる可能性がある”と付言した。
EC側のデータによると、中国製EVは2019年の1%から昨年には8%となり、2025年には15%にも達するとしていて、販売価格がEU域内産EVより20%も安価で取引されていることがシェア増加の原因だとしている。
かかるEC側発表に対して、中国商務部(省に相当)の賀亜東報道官(フー・アドン)は7月4日、“欧州と中国側が同じ方向を向いて誠意を示し、できるだけ早く協議プロセスを進めることを望む”と述べて牽制している。
今回の暫定関税措置によって、政府補助金の受領額やECによる昨年9月からの反補助金調査への協力の度合いに基づき、比亜迪(BYD、1995年設立)は17.4%、吉利汽車(Geely、1997年設立)は19.9%、上海汽車(SAIC、1958年設立の国営企業)には37.6%が従来の10%に上乗せされて適用されることになる。
また、同様にECの調査に協力した米テスラ(2003年設立)、ドイツBMW(1916年設立)等の中国製逆輸入車には20.8%の追加関税に止め、非協力だった他メーカーの中国車には37.6%を賦課するとしている。
かかるECの発表に対して、欧州最大のドイツVW(1937年設立)は早速、“今回の決定は、特にドイツの自動車メーカーにとって深刻だ”とし、“中国政府による報復関税等、中国向け輸出車が不当に扱われることで、大変不利益となるからだ”との非難声明を出した。
VW等ドイツメーカーは昨年、全販売台数の3分の1を中国国内で売り上げているという事情がある。
一方、米政府が今年8月から、中国製EVに賦課するとする関税は、今回のEC発表より遥かに高い100%とされている。
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