11月18日付
『ロイター通信』は、「TO元CFO、TO脱税行為に繋がる同社幹部宛の小切手をトランプが切ったと証言」と題して、トランプ前大統領が実質オーナーとなっているTOで長年金庫番を務めていたワイゼルバーグ元CFOが、ニューヨーク地裁において、自身のみならずTOの脱税行為までも認めたものの、トランプ一家は不関与だったと証言したと報じている。
TOで長年金庫番を務めたアレン・ワイゼルバーグ元CFOは11月17日、TOの脱税容疑について行われたニューヨーク地裁の審理において、TOの役員に対するクリスマス賞与の支払いに関し、彼らが独立した取引先と偽って発行した小切手にドナルド・トランプ前大統領(76歳)が署名していたと証言した。
しかし、同元CFOは、当該脱税行為に関して同前大統領は関与していないとも陳述した。
TOを刑事訴追したニューヨーク州マンハッタン地区検察局は、税務当局を欺いてTO経費をごまかす行為を15年間も続けてきたと訴えた。
同検察局は、TO従業員の私的経費についても同様の手口でごまかしていたとも言及している。
同元CFOは今年8月、当局と司法取引を行う過程で、罪を認めていて、また、裁判で証言することも同意していた。
ただ、当局はトランプ自身を訴追対象とはしていない。
同元CFOの証言によると、各個人及びTOに関わる税負担を逃れるため、自身、ジェフリー・マッコーニー経理担当責任者及び他数名のTO幹部に対するクリスマス賞与支払について、会社外関係者への支払いと偽る行為を2005~2017年の間に実施していたという。
同元CFOは、“トランプ氏は、賞与用の小切手への署名をいつも好んで行っていた”とした上で、スーザン・ホフィンガー検事からの、トランプ氏はこれらの小切手がTO従業員向けのためだったことを理解していたかとの質問に答えて、“そのように理解していた”とも証言した。
しかし、TO代理人のアラン・フターファス弁護士(61歳)の反対尋問に答えて、同元CFOは、マッコーニーと共謀して行ったもので、トランプ一家の誰とも相談していないと証言している。
同元CFOは更に、“自身の強欲さによって行われたものだ”とも証言した。
ワイゼルバーグ元CFOは既に、自身の176万ドル(約2億4,600万円)に関わる所得税をごまかした罪を認めている。
また、マッコーニーは、当局が同元CFO及びTOを脱税容疑で起訴する前に罪を認めていたことから免責扱いとなっている。
一方、TO自身は、会社としての脱税行為を否認し、ワイゼルバーグ元CFOが自身の利益のために独断で行ったものだと主張している。
なお、同元CFOは会社側のフターファス弁護士の尋問に答えて、“トランプ氏の大統領就任が確定したことから、2017年にはTOにおける全ての不正行為を終わらせ、経理関連の健全化を図った”と証言した。
その上で、同元CFOは、会社からの信頼を裏切ってしまったとして、“恥ずかしく、猛省している”と言及している。
11月19日付『ABCニュース』は、「TO元CFO、会社からの手当て支給が停止された後も20万ドルの給与アップを認められていたと証言」として、TOにおける経費処理の不適切さについて詳報している。
TO元CFOのワイゼルバーグ被告は11月18日に行われた裁判で、会社からの手当てを簿外扱いとして自身の確定申告を偽り、脱税行為を行っていたことが判明した後の2019年にも、TO幹部のエリック・トランプ氏(38歳)から20万ドル(約2,800万円)の給与アップを認められていたと証言した。
同元CFOは、トランプ氏が大統領に就任した後にTO代表となっていたエリック氏が2017年に、同元CFOの豪邸家賃やその他経費をTOが負担していることを隠した上で確定申告を行って所得税をごまかしていたことを知ることになったと語った。
その上で同元CFOは、トランプ氏の大統領就任で、TO内の“経理関係の健全化”を図ることになり、それまでTOが負担していた同元CFOの家賃、車のリース代、孫の学費等の支払いが停止されたため、エリック氏に陳情してその代替として20万ドルの給与アップを認めてもらったと証言した。
更に、同元CFOは、ホフィンガー検事からの“2021年7月に、被告人が脱税行為等15に及ぶ罪で訴追された後も、TOは114万ドル(約1億6千万円)の給与を支給していたのか”との質問に答えて、“その通りだ”とも証言した。
そこで同検事は、かかる経緯から、同元CFOの違法行為をTO自身も容認していたことが明らかだと訴えた。
なお、同検事が、TOからの給与や賞与を少なく計上することでTOにどのような便益をもたらすか、と尋問したことに対して、同元CFOは、会社にとって“給与税の節税となる”ことを認めている。
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