岸田文雄首相(64歳)が6月10日、日本の首相として8年振りに「アジア安全保障会議(シャングリラ対話、注後記)」において基調講演を行った。同会議には、対峙する米中両国防トップも出席している。同会議席上、中国国防トップが米国防トップを目の敵にして、台湾独立阻止のために徹底抗戦すると改めて宣言した。
6月12日付米
『CNNニュース』は、「中国、“威張っている”米国を非難し、台湾独立阻止のため“徹底抗戦”すると宣言」と題して、中国国防トップが6月12日、シャングリラ対話に出席して、米国が中国に対抗しようとアジア諸国を力で従わせようとしていると非難した上で、台湾独立を支援する米国とは“徹底抗戦”すると改めて宣言したと報じている。
中国の魏鳳和国防部長(ウェイ・フォンホー、68歳、国防相に相当、2018年就任)は6月12日、米国が“威張った”上でアジア諸国を“力で従属させよう”としていると声高に非難した。
同部長が開催中のシャングリラ対話において演説したもので、“台湾は中国の領土問題における最優先の事項だ”とした上で、台湾を独立させようとする悪巧みを潰すためには“手段を択ばず”徹底して戦うとも宣言した。
これに先立つ先月下旬、訪日中のジョー・バイデン大統領(79歳)が記者会見で、もし中国が台湾に武力侵攻したら米国も“武力で”対応すると表明していた。
また、シャングリラ対話に出席したロイド・オースティン国防長官(68歳)も6月11日、中国が“インド太平洋地域の安全保障、安定及び繁栄を棄損しよう”と、強引で攻撃的かつ危険な活動を展開していると中国を名指しで非難する演説を行っていた。
同長官は、米軍が日本、豪州、インド、インドネシアとの共同演習を通じて同地域における軍事的連携を形成していくとも付言していた。
魏部長は、同長官の発言に対して、中国が断固として拒否する“武力政治”を展開しようとしていると非難した。
また、“如何なる国も他国に対して同調するよう強制するべきではないし、また、多国間主義を口実にして他国を従属させようとしてはならない”と強調した。
更に、“オースティン長官が表明したインド太平洋戦略は、自由で開かれたインド太平洋構築という名目の下、同地域の諸国を従属させて、ある特定の国(中国)を標的としたグループを形成しようとしている”とし、“衝突を引き起こそうとする戦略に他ならない”とも付言した。
しかし、シャングリラ対話に出席した米同盟国の豪州及びカナダの国防トップからも、中国を非難する声が上がっている。
両トップは異口同音に、両国の航空機が南シナ海上空を飛行中に、中国軍によって国際法に抵触する航路妨害を受けていると直接的に非難した。
また、6月10日に基調演説を行った岸田文雄首相も、国名こそ挙げなかったが、アジアにおける安全保障が脅かされようとしている現状に対応すべく、国防費を大幅に増額して“反撃用武器”の装備を強化していく考えを表明している。
同日付フランス『AFP通信』も、「中国、台湾独立阻止のため“最後まで戦い抜く”と宣言」として、中国国防部長の挑発的演説を詳報している。
魏国防部長は6月12日、台湾をめぐって米中間が激しく対立しつつある中、台湾独立を阻止するために“最後まで戦い抜く”と強く表明した。
米中両大国は、中国が長らく統一を目指している台湾に関わる問題で、武力衝突に突き進まざるを得ない状況に追い込まれつつある。
中国は、台湾上空に戦闘機を何機も派遣して武力を誇示してきていることから、オースティン国防長官も6月11日、中国が同地域を武力で“不安定化させている”と非難していた。
これに反駁する形で、魏部長は、中国の核心的利益である台湾を死守するため、“如何なる犠牲を払っても、最後まで戦い抜く”と強調した。
ただ、同部長は、“世界の平和維持のため”には、米中間の関係を“安定”させることが必要だ、との融和的コメントも出している。
(注)シャングリラ対話:安全保障問題などを研究するシンクタンク、国際戦略研究所(IISS、1958年設立、本部ロンドン)が主催。2002年から年1回のペースで開かれていて、アジア・太平洋地域を中心に各国の国防、安全保障の担当閣僚らが顔をそろえる。シャングリラホテル・シンガポールが会場なので、そう呼ばれている。政府間の公式な会議では自由な議論が難しいケースもあるため、外交・安保の専門家やビジネス界のリーダーなども交えて率直な意見をぶつけあう場を民間が設け、地域の信頼関係を築くことに役立ててもらおうという狙いがある。
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