米ジョー・バイデン大統領(79歳)は12月6日、中国における人権問題を理由として、来年2月初旬に開幕する北京オリンピックに閣僚や政府高官を派遣しない“外交ボイコット”を実行すると発表した。これに、豪スコット・モリソン首相(53歳)も追随する旨12月8日に正式表明した。翻って米同盟国の日本はどうかというと、口先だけで人権問題に“懸念あり”と表明するだけで、実質的に何ら批判的活動は取ろうとして来ていないことから、今回も目立った行動は取るまい、と米メディアが批評している。
12月7日付
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア):「直近のオリンピック開催国の日本、ジェノサイド(民族大量虐殺)と酷評されている北京オリンピックに通常どおり参加意向か」
岸田文雄首相(64歳)は12月7日、前日のジョー・バイデン大統領が北京オリンピックへの外交ボイコット方針を表明したのに対して、“日本の国益等を総合的に判断”して対応する意向だとコメントした。
日本の立場は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題で1年延期された東京大会を今夏に開催したばかりなので、北京大会への対応が特に注目されている。
COVID-19について言えば、2019年末に武漢(ウーハン)が発生源となっているが、当時の中国政府は、感染拡大の懸念を無視して大イベントを開催したり、感染症の深刻さを公表しようとした医師らを黙らせたり、更には、世界保健機関(WHO、1948年設立)に対して新感染症の恐れについて虚偽報告をする愚挙を冒していた。
その中国における人権問題は、新疆ウィグル自治区のウィグル族に対する人権弾圧が注目されているが、同時にチベット族やモンゴル族の文化・言語を抹殺しようとしているだけでなく、人権活動家や弁護士らを表舞台から消し去っている。
直近でも、中国政府幹部を告発した、テニス4大大会優勝者でもあった彭帥選手(ポン・シュアイ、35歳)が忽然と姿を消してしまい、この問題からも北京大会へのボイコットの声が高まっている。
ところが、中国政府が同選手の安全について保証行動を取っていないにも拘らず、国際オリンピック委員会(IOC、1894年設立)は、同選手と交わしたビデオ通話で以て彼女は“安全”だと主張して、中国政府を擁護する対応を取っている。
しかし、日本の著名なテニスプレーヤーの大坂なおみ選手はじめ多くの選手が、中国政府は彭選手の安全を証明するよう強く求めている。
ただ、岸田首相は12月7日、バイデン大統領の正式表明に関わり、どう対応するのか最終決定について何らコメントしなかった。
林芳正外相(60歳)はもう少し詳しい説明を加えたが、それでも、人権問題も考慮した上で“適切な時期に”公式の表明をする、と語るに止まった。
なお、中国は、人権問題等の非難を受けていない東京大会に通常どおり参加したものの、従来より、日本が過去に起こした戦争犯罪について厳しく非難してきている。
12月7日にも外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)は、真珠湾攻撃80周年に関連し、日本は“過去の軍国主義下の人権に対する残忍な罪を深く反省し、具体的行動によって国際社会から信頼を勝ち取るべく努める”ことが必要だと言及した。
一方、北京大会の件であるが、日本の活動家は、政府が(中国における)現下の状況や人権弾圧問題に沈黙したままであることに落胆している。
日本の関係者はウィグル族のジェノサイド問題に口では“懸念あり”と表明しているが、何ら具体的アクションを取らないばかりか、民間企業も、例えば無印良品やユニクロは、ウィグル族が綿花畑で強制労働をさせられているにも拘らず、同産品を大っぴらに使い続けている程である。
自由インド太平洋連盟(FIPA、注後記)の石井英俊副会長(45歳)は今年9月、『ブライトバート』のインタビューに答えて、“日本政府のみならず、国会議員のほとんどが北京大会について口をつぐんでいる”とし、“何故なら、もし日本が北京大会について異議を唱えた場合、中国が(報復措置として)東京大会不参加を決定してしまうことを恐れているからだ”と批判していた。
FIPAは今年2月、他の150余りの国際人権グループと連名で、世界各国に対して北京大会をボイコットするよう訴える書簡を出状している。
同書簡で、2008年の北京夏季大会以降も“中国共産党政府は人権問題を改善するどころか、益々事態を悪化させている”とした上で、従って、“ボイコットを忌避することは、曲がりなりにも中国共産党の独裁主義的規制及び人権侵害を是認したと取られてしまう”と訴えていた。
(注)FIPA:ウィグル族人権活動家・実業家のレビア・カーディル(74歳)会長が主導して結成。主として、ウィグル族等少数民族への人権弾圧や、香港や台湾への反民主化政策を強行する中国共産党政府を牽制し、改善させることが活動目標。
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