新型コロナウィルス(COVID-19)感染が再拡大している欧州では、再度の都市封鎖措置に反対する抗議デモが激化している。一方、欧米諸国に比してワクチン接種に大きく後れを取っていたアジアでは、デルタ変異株(インドで最初に発見された変異ウィルス)蔓延で感染及び死亡率が上昇したこともあって、十分なワクチン確保と相俟って市民のワクチン接種希望が高まり、今では欧米諸国を上回る接種率となっている。
11月22日付
『AP通信』:「アジア諸国、当初はワクチン接種が低調も今や急上昇」
アジアの2ヵ国、カンボジアと日本は、今年初めにおいては、COVID-19感染率がさほど高くないことやワクチン供給問題等もあって、ワクチン接種率は低調であった。
例えばカンボジアでは、ワクチン接種が始まったのは2月10日と、米国や英国でワクチン接種が開始されてから2ヵ月も後であった。
アジアの他国と同様、財政的・物理的問題からワクチン獲得が十分にできず、“世界のデータ(OWID、注1後記)”によれば、5月初め時点における同国のワクチン接種率は、人口1,600万人に対して僅か11%(1回接種)であった。...
全部読む
11月22日付
『AP通信』:「アジア諸国、当初はワクチン接種が低調も今や急上昇」
アジアの2ヵ国、カンボジアと日本は、今年初めにおいては、COVID-19感染率がさほど高くないことやワクチン供給問題等もあって、ワクチン接種率は低調であった。
例えばカンボジアでは、ワクチン接種が始まったのは2月10日と、米国や英国でワクチン接種が開始されてから2ヵ月も後であった。
アジアの他国と同様、財政的・物理的問題からワクチン獲得が十分にできず、“世界のデータ(OWID、注1後記)”によれば、5月初め時点における同国のワクチン接種率は、人口1,600万人に対して僅か11%(1回接種)であった。
更に、同国が頼りにしていたインド製ワクチン供給が、4月頃にインド内でデルタ株が猛威を振るってワクチン輸出が停止されたことも逆風となっていた。
そこで、親中派のフン・セン首相(69歳、1998年就任)が中国に頼み込んで3,700万回分の中国製ワクチンを分けてもらった。一部は中国からの供与でもある。
その結果、現在の同国ワクチン接種率は78%と、米国の58%を大きく上回っただけでなく、今後は3~4歳の幼児対象のワクチン投与も予定している程である。
同首相は先週、“カンボジアのワクチン接種成功”は中国からの協力なくしては成し遂げられなかったと持ち上げている。
ただ、同国向けには米国、日本、英国からの提供に加えて、COVAXファシリティ(注2後記)からのワクチン供与もなされている。
また、先進国である日本においても、ワクチン接種開始は2月と遅かった。
ひとつには、欧米で承認されたワクチンについて、日本国内で改めて臨床試験を行った上で承認するという二重手続き問題で、欧米製ワクチン手配が遅延したという背景がある。
特に、昨年から今夏に1年延期された東京オリンピック開催を控えて、ワクチン接種率低調問題から、大会開催に反対する声が日増しに高まる程であった。
そこで、当時の菅義偉首相(72歳)が、迅速なワクチン確保の大号令をかけた上で、自衛隊を導入して東京・大阪に大規模ワクチン接種センターを設けただけでなく、医師・看護師以外にも歯科医・救急救命士・実験助手までもワクチン接種行為が可能となるよう規制を緩めるという、思い切った対策を講じた。
その結果、日本の現在のワクチン接種率は76%まで達している。
一方、マレーシアでは、ワクチン接種率向上に人一倍の努力が求められていた。
何故なら、初めはワクチン確保に難儀しただけでなく、同国には不法入国した住民や政府からの迫害を逃れている部族もいるため、政府提供のワクチンを行き渡らせることに限界があり、OWIDによれば、同国の人口3,300万人のワクチン接種率は僅か5%以下であった。
そこで同国では、政府手配のワクチン接種を嫌う人たち向けには赤十字の協力を仰いだり、また、都市部に数百ものワクチン接種センターを設けたりしてワクチン接種を促進させ、現在では76%の接種率まで引き上げている。
ただ、アジアの中でも、インドやインドネシアでは、ワクチン接種に依然困難を極めている。
前者では、今年10月、10億回分のワクチン提供を達成したと喜んでいたが、14億人近くの人口を抱える同国において、実際のワクチン接種率は依然29%と低調である。
また、後者では、ワクチン接種開始が他国よりも断然早かったが、数千にも及ぶ離島にも多くの住民がいるため、隅々までワクチン投与を行き渡らせるのに非常に時間を要している。
なお、アジア太平洋地域のその他の国々では、シンガポールのワクチン接種率92%を筆頭に、オーストラリア、中国、日本、ブータン等、軒並みワクチン接種率が70%超となっている。
(注1)OWID:英オックスフォード大(1096年設立)内で、2011年に立ち上げられた世界の科学的データを収集・解析して発表するサイト。世界の貧困、疫病、飢餓、気候変動、戦争、その他自然災害等のデータを網羅。
(注2)COVAXファシリティ:COVID-19ワクチンを中・低所得国にも公平に提供することを目的としたグローバルな取り組み。GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)、世界保健機関(WHO)、感染症流行対策イノベーション連合などが主導して2020年4月立ち上げ。
閉じる