イスラエルでは、12日の閣議に先立ち、2人の大臣が、国内の多くの場所で導入されているワクチン・パスポートの提示義務は、医学的な理由よりも、ワクチン接種を促すためにあると話している会話が、オンになっていたマイクでキャッチされ、全国に生中継された。
イスラエルは、世界で初めてワクチン・パスポートを発行した国である。グリーンパスと呼ばれたワクチン接種証明書は、6月に廃止されたが、国内で新型コロナウィルスの感染が再び拡大したことを受けて再導入され、8月20日から、レストラン、プール、屋内のすべての娯楽施設、公園を除くすべての公共の場所への入場の際に提示が義務付けられた。ワクチンを接種していない12歳以下の子供がこれらの場所に入場するには、検査結果で陰性であることを証明する必要がある。
こうした中、米『ナショナル・ファイル』とイスラエル『タイムズ・オブ・イスラエル』によると、12日、イスラエルのニツァン・ホロヴィッツ保健相は週1回の閣議が始まる前に、同僚のアイェレット・シャクド内務相とワクチン・パスポート制度について話し合っていた。その会話を、ワイヤレスマイクがキャッチし、全国放送された。ホロヴィッツ氏とシャクド氏は、イスラエルのチャンネル12ニュースのマイクに会話が拾われていたことに気づいていなかったという。
先月末に、3回目のブースター注射を受けない市民は、いずれワクチン・パスポートの認定を受けられなくなると発言していた保健相は、レストランやプールなどの屋外席にワクチン・パスポートを適用することは、実は疫学的に正当な理由がないという点で、内務相と意見が一致した。そして、「問題は、予防接種を受けない人たちにある。彼らに少しでも影響を与えなければ、この状況を打開することはできない」と指摘し、イスラエルの多くの場所でワクチン・パスポートが必要とされているのは、単に国全体にワクチン摂取を強制するためだと認めた。さらに同氏は、「ある種の普遍性」を持つグリーンパスに例外を設けることは、そもそもパスポートの科学的妥当性を疑われることにつながると主張した。
また、保健相は「例えば、60歳から65歳未満の、危機的な状態にある人が病院に運ばれてきた場合、間違いなくワクチンを接種していない人だ。60から65歳以上では、だいたい3分の2がワクチン未接種、3分の1がワクチン接種済みだ。新型コロナは、もはやワクチンを受けていない人にとっての一大事である」と内務相に説明した。
エラザール・スターン情報相が2人の会話に加わり、「(ワクチンを受けていない人が)コロナウィルス病棟のベッドを占有しているのは苛立たしいことだ」と述べ、「集中治療室では、そうですね」と保健相が答えている。
保健省が10日に発表した数字によると、60歳以下の場合、3回目のワクチンを接種していない人は、重症化する確率が約3倍、何も接種していない人の場合は確率が約10倍に上がるという。また、60歳以上の人では、3回目のワクチンを接種すると、2回接種の人に比べて、重症化する可能性が10分の一になり、未接種の人に比べると40分の一になるという。
『ナショナル・ファイル』は、イスラエルの閣僚は、ワクチン・パスポートが予防接種率を高めるためのさおになると主張しているが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの新しい研究では、このような制度の下では、予防接種を受けることに消極的な人は、さらに消極的になることが確認されたと伝えている。研究を行ったメンバーの一人であるポラット博士は、「ワクチン・パスポートのような公衆衛生上のインセンティブが心理的欲求を苛立たせるものであれば、例えば、人々に自分の決定に対する自由意志の欠如を感じさせることで、逆説的に人々の接種意欲を低下させる」と述べている。
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