中国IT大手のアリババグループ(1999年創業)は、企業間電子商取引のオンライン・マーケットを運営していて、今や世界240ヵ国余りに拡大している。米アマゾンと肩を並べるほど急成長した企業であるが、二人の共同創業者の現在の環境が大きく違ってきている。一方は、中国共産党政府に迎合する対応をして、世界を自由に飛び回っているが、もう一方は、中国国営金融機関等を“質屋”呼ばわりしたこと等が祟って、今は自宅軟禁を強いられている模様で公に姿をみせていない状況となっている。
8月14日付
『ニューヨーク・ポスト』紙:「アリババグループ共同創業者のジョー・ツァイ氏は安泰でジャック・マー氏は自宅軟禁」
アリババグループ共同創業者のジョー・ツァイ副会長(57歳、蔡崇信)は今春、ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークサウス(注後記)に建つ2つの高級マンションを1億5,700万ドル(約172億7千万円)で買収した。
同氏の資産は少なくとも120億ドル(約1兆3,200億円)と見積もられていて、米国では既に、ブルックリン・ネッツ(1967年創設、全米プロバスケットボール・リーグNBA所属のチーム)、同チーム本拠地のバークレイズ・センター(2012年開業の屋内競技場)、ニューヨーク・リバーティ(1977年創設、全米女子プロバスケットボール・リーグWNBA所属のチーム)、サンディエゴ・シールズ(2017年創設、全米ラクロス・リーグ所属のチーム)等を所有している。...
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8月14日付
『ニューヨーク・ポスト』紙:「アリババグループ共同創業者のジョー・ツァイ氏は安泰でジャック・マー氏は自宅軟禁」
アリババグループ共同創業者のジョー・ツァイ副会長(57歳、蔡崇信)は今春、ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークサウス(注後記)に建つ2つの高級マンションを1億5,700万ドル(約172億7千万円)で買収した。
同氏の資産は少なくとも120億ドル(約1兆3,200億円)と見積もられていて、米国では既に、ブルックリン・ネッツ(1967年創設、全米プロバスケットボール・リーグNBA所属のチーム)、同チーム本拠地のバークレイズ・センター(2012年開業の屋内競技場)、ニューヨーク・リバーティ(1977年創設、全米女子プロバスケットボール・リーグWNBA所属のチーム)、サンディエゴ・シールズ(2017年創設、全米ラクロス・リーグ所属のチーム)等を所有している。
同氏は台湾生まれで、米国で教育を受け、現在香港及びカナダ国籍を保有しており、香港の豪邸、カリフォルニア州ラ・ホヤ(サンディエゴ北部の高級住宅街)海岸沿いの邸宅、そして先のセントラルパークサウスの高級マンションを根城にして、世界を自由に飛び回っている。
これに反して、もう一人の共同創業者であるジャック・マー元会長(56歳、馬雲)は最近10ヵ月余り公に姿を見せることはなく、事情通によれば、中国共産党によって自宅軟禁とされていると言われている。
この直接的な原因と考えられるのが、マー氏が昨年秋、公の場で中国国営金融機関及びそれを管掌する政府部署を後ろ向きの考えしか持たないと批評し、更に“質屋”レベルと酷評してしまったことが挙げられる。
更に付け加えれば、マー氏はアリババグループを5千億ドル(約55兆円)規模の大企業に成長させたことで、中国国内はもとより世界においても、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)より有名になってしまったことである。
よって、中国中央指導部にとって、国家主席より人気のあるような人物を苦々しく思っていたところへ、先に言及した、悪名高い当局批判演説が行われたことで堪忍袋の緒が切れたと想像するに難くない。
「中国がもたらす死:龍との対峙」(2011年発刊)の著者であるピーター・ナバロ氏(72歳、経済学者・公共政策学者)は『ニューヨーク・ポスト』紙のインタビューに答えて、“ツァイ氏は、マー氏より物事の裏まで精通していた”とコメントした。
すなわち、同氏は、“米国では誤った発言を後で訂正できるが、中国では、習近平より有名になってしまったら取り返しがつかないことになる”とし、“ツァイ氏はそれをわきまえていたが、マー氏はそうではなかった”と解説している。
そのツァイ氏の中国共産党迎合と捉えられる行動が、昨年10月に投稿されたフェイスブック上の見解に現われている。
彼は、ヒューストン・ロケッツ(1967年創設、NBA所属のチーム)ゼネラルマネージャーのダリル・モーリー氏(48歳)が香港の民主活動家を支持するとツイートしたことに応えて、NBAファンへと題した投稿で、“香港の抗議活動家は分離主義者だ”と非難した。
そして同氏は、“西側メディアにひどく誤解されていることだが、14億人の中国国民は、(過去に西欧諸国によって踏みにじられた悲惨な歴史より)こと領土問題や主権擁護に関しては、一枚岩となって激しく抵抗していく”とし、“この問題は交渉余地のない問答無用の事態だ”と強調した。
一方、マー氏の近況についてツァイ氏は6月、『CNBC』のインタビューに答えて、“彼は目下身を潜めている”とし、“毎日彼とやり取りしているが、彼はいたって元気で、今は趣味の絵画に没頭している”とコメントしている。
(注)セントラルパークサウス:マンハッタン中央にあるセントラル・パーク南端の59丁目で、東は5番街、西は8番街までの間の通りを指す。億万長者が住む超高級住宅街と言われている。
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