既報どおり、台湾は新型コロナウィルス(COVID-19)感染防止に厳しい隔離政策を取ったことから、感染抑制が奏功していたが、ワクチン手当てには後れを取っていた。5月に感染再拡大が発生した際、僅か70万回分しか入手できていない状況に見舞われたことから、米国及び日本から提供された計500万回分のワクチンで何とかしのいでいる。そうした中、台湾政府によるワクチン手配には、中国の目に見えない妨害が考えられていることから、台湾の二大半導体メーカーがワクチン手配に乗り出すことになり、この程、ドイツのバイオNテック製ワクチン1,000万回分を手当てすることに成功した。
7月12日付米
『AP通信』:「台湾のIT企業が独自に手当てしたワクチンを政府に提供」
台湾のIT企業大手2社は7月12日、ドイツのバイオNテック製ワクチン1,000万回分を独自に入手し、ワクチン手当て不足に喘ぐ台湾政府宛に提供することとしたと発表した。
台湾積体電路製造(TSMC、1987年設立の半導体メーカー)及び鴻海精密工業(ホンハイ、1974年設立のスマートフォン・薄型テレビ等電子製品の受託生産メーカー)の2社で、ドイツ製ワクチンは中国市場向け販売代理店の上海復星医薬(フォサン・ファーマ、1992年設立)経由の売買契約であり、同ワクチンはドイツから台湾向けに直接配送されるという。...
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7月12日付米
『AP通信』:「台湾のIT企業が独自に手当てしたワクチンを政府に提供」
台湾のIT企業大手2社は7月12日、ドイツのバイオNテック製ワクチン1,000万回分を独自に入手し、ワクチン手当て不足に喘ぐ台湾政府宛に提供することとしたと発表した。
台湾積体電路製造(TSMC、1987年設立の半導体メーカー)及び鴻海精密工業(ホンハイ、1974年設立のスマートフォン・薄型テレビ等電子製品の受託生産メーカー)の2社で、ドイツ製ワクチンは中国市場向け販売代理店の上海復星医薬(フォサン・ファーマ、1992年設立)経由の売買契約であり、同ワクチンはドイツから台湾向けに直接配送されるという。
今回、民間企業がワクチン手当てに乗り出したのには、台湾が、中国の反対もあって世界保健機関(WHO、1948年設立)から追放されていることや、台湾政府のワクチン世界市場へのアクセスについて、“台湾は中国の一部”と主張する中国の横やりもあって、難儀しているという事情がある。
現に今年2月、台湾の陳時中衛生福利部長(チェン・シーヂョン、67歳、保健相に相当)は、バイオNテック社と500万回分のワクチン売買取引が成約間際になって不成立となったとし、中国の名前は出さなかったものの“政治的圧力”がかけられたためと主張していた。
台湾政府は従来、2,900万回分のワクチン購入契約を締結していたものの、実際には、供給遅延や国際的なワクチン不足に遭って、5月に新規感染が再拡大した際、僅か70万回分しか手当てできなかった。
なお、台湾向けにはこれまで、米国から米モデルナ製ワクチン250万回分と、日本から英国アストラゼネカ製ワクチン110万回分が提供され、また、台湾自身も直接アストラゼネカ製ワクチン62万6千回分手当てしている。
一方、中国政府がかつて、中国製ワクチンの無償提供を提案してきたが、蔡英文総統(ツァイ・インウェン、64歳、2016年就任)は、背景に政治的策略があるとしてこれを断っている。
同日付欧米『ロイター通信』:「台湾の鴻海とTSMC、独バイオNテック製ワクチンを購入」
台湾半導体大手メーカー2社が7月12日、独バイオNテック製ワクチン1,000万回分(500万回分ずつ)を購入する契約を締結したとし、購入金額は3億5千万ドル(約385億円)になると発表した。
鴻海の創業者の郭台銘氏(グオ・タイミン、70歳)は、フェイスブックの投稿で契約がまとまったことに触れて、購入分のワクチンを台湾政府に寄付する予定だと述べた。
ただ、同氏は、“気を緩めず、納入時期等を詰めるために引き続き精力的に取り組む”とも言及している。
今回のワクチン購入は、バイオNテック社の中国市場向け販売代理店の上海復星医薬経由の取引となるが、同氏によれば、交渉途上で特に中国からの介入はなかったという。
なお、台湾では現在、比較的小規模な市中感染がほぼ落ち着いてきているものの、全人口2,360万人のうち1回目のワクチン接種者は依然僅か10%である。
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