東京大会組織委員会は7月8日、新型コロナウィルス(COVID-19)感染が再び深刻化していること等から、開会式含めて1都3県で行われる競技場への一般観戦者を入れないことを決定した。これを受けて、米国代表選手にとって初めての事態であることから、大きな戸惑いとなると報じている。なお、米データベース運営企業によると、かかる事態となっても、米国チームが今回もぶっちぎりで最多メダルを獲得することになると予想している。
7月10日付
『NBCニュース』:「東京オリンピックが無観客開催となり、米国代表選手にとって新たな戸惑い」
東京オリンピック開会式を2週間後に控えた7月8日、大会組織委員会はCOVID-19感染再拡大の事態に遭って、開会式含めた主要競技場への一般観戦者の入場を認めないことを決定した。
これを受けて、米国代表選手にとって、一般の応援者がいない環境下での競技遂行に戸惑いを隠せないとみられる。
まず、米体操界の女王シモーネ・バイルズ選手(24歳、リオデジャネイロオリンピックで4個の金メダル獲得)は7月10日、『NBC』ニュース番組「トゥデイ」の司会者ホーダ・コッツ氏(56歳)のインタビューに答えて、“自身は(多くの観客の前で演技するという)プレッシャーを糧にしてきたので、無観客という状況下で演技することにどういう影響が出るのか、少々不安に感じている”と述べた。
また、初のオリンピックとなる飛び込みのクリスタ・パーマー選手(29歳)は、精神的な励みを味方につけるようにするとし、チームメイト達の観客席での応援を以て、“多くの観客が見守ってくれていると心に描く”ようにして競技に臨むと答えた。
一方、自由形競泳のケイティ・レデッキー選手(24歳、ロンドン及びリオデジャネイロオリンピックで合計5個の金メダル獲得)は、自身も含めて代表選手は皆この5年間一生懸命練習してきたので、“大会に参加してベストを尽くすことに喜びを感じている”と表明している。
彼女は、参加代表選手も数百万人の視聴者も、世界有数の選手が金メダルをかけて最善を尽くすという姿に異論はないはずだとし、“今回はテレビ放映を主としたオリンピックと捉えればよい”とも付言している。
なお、COVID-19感染問題が深刻化したとしている日本は、人口1億2,600万人に対して、感染者は81万2千人、死者は約1万5千人であり、米国の各々3,400万人、60万9千人と比較して遥かに少ない。
ただ、米国におけるワクチン接種率(2回)が47%であるのに対して、日本のそれは僅か16%と非常に低い。
従って、日本側として、海外の観戦者は受け入れないことにしたものの、数万人に及ぶ選手団や関係者、メディア等が長期滞在することになることから、オリンピックを契機に感染爆発が発生することを非常に懸念して、主要競技場への一般入場者も認めないとする決断をせざるを得なかったものとみられる。
なお、日本入国前にワクチン接種を条件とされているが、これまで入国した代表チームの中で、少なくとも3人の選手・コーチがCOVID-19陽性となっている。
一方、『NBC』ニュース番組のインタビューに答えた元オリンピック代表選手もスポーツ心理学者も、無観客の中で初めて競技することに対して、参加選手にとってどういう影響が出るのか予想がつかない、と異口同音に述べている。
元平泳ぎ選手のタラ・カーク・セル氏(38歳、アテネオリンピック銀メダリスト)は、“何人かの代表選手にとって、無観客の中で競技をすることは非常に深刻なことと思われる”と語っている。
7月9日付『ボイス・オブ・アメリカ』:「東京大会参加代表選手、(無観客という)初めての環境下での挑戦」
日本の大会組織委員会が、主要競技場への一般観戦者を入れないと決定したことから、多くの参加代表選手にとって、無観客の中での競技という初めての挑戦となる。
男子プロテニスプレイヤーのニック・キリオス選手(26歳、オーストラリア人)は7月8日、脚を怪我していることもあるが、無観客の中で競技はしたくないとして不参加とする旨ツイートしている。
一方、オリンピック競技におけるメダル獲得競争であるが、米エンターテインメント・データ運営企業のグレースノート(1998年創業)によると、“米国チームが7大会連続で最多のメダルを獲得することになる見込み”だという。
第2位、3位は中国とロシアとなると予想される。
但し、ロシアについては、世界反ドーピング機関(WADA、1999年設立、本拠カナダ・モントリオール)が組織的ドーピング違反でロシア代表のオリンピック参加を禁止している。
そして、ドーピング違反行為に全く関わっていないと証明された335人の選手が、個人の資格で参加することが認められているという事情から、東京大会でのロシアとしてのメダル獲得という正式記録は出ないことになる。
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