与党・自民党は先月末、性的マイノリティの人たちへの理解を促進するLGBT法案について、同党総務会で賛否両論が出て意見が纏まらなかったことから、6月16日に会期末を迎える今国会への法案提出を見送ることとした。これに対して、LGBTQ(注1後記)活動家グループがこの程、世界で後れを取っているとして、可及的速やかな同法案成立に取り組むよう自民党宛に嘆願書を提出した。
6月4日付
『AP通信』:「日本のLGBTQ活動家、東京オリンピック開会前までのLGBT法案成立を要請」
日本の性的マイノリティ・グループとその支援者らが6月4日、与党・自民党に対して、東京オリンピック開会前までにLGBT法案成立を目指して取り組むよう嘆願書を提出した。
同グループは同時に、経済再生のために事業者支援に積極的な菅義偉首相(72歳)に対して、性的マイノリティ保護にもっと積極的になるよう経営者側に圧力をかけていくよう要請した。...
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6月4日付
『AP通信』:「日本のLGBTQ活動家、東京オリンピック開会前までのLGBT法案成立を要請」
日本の性的マイノリティ・グループとその支援者らが6月4日、与党・自民党に対して、東京オリンピック開会前までにLGBT法案成立を目指して取り組むよう嘆願書を提出した。
同グループは同時に、経済再生のために事業者支援に積極的な菅義偉首相(72歳)に対して、性的マイノリティ保護にもっと積極的になるよう経営者側に圧力をかけていくよう要請した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、注2後記)日本代表の土井香苗氏(45歳、弁護士)は、“性的マイノリティの人たちの生活や命を守るため、LGBT法案を制定することが最初のステップになる”とコメントした。
その上で同代表は、“東京オリンピック開会前に同法案を成立させることは国際社会にとっても必要であり、大会参加のために来日するLGBTQ選手、ジャーナリストやその他関係者が平等に扱われるようにするためにも重要だ”と訴えた。
日本における性の多様性への理解や支持は、遅ればせながら漸く広がりつつあるが、他国と違って依然法律で平等性が保証されていない。
日本では同性カップルは法律上認知されておらず、そのためにLGBTQの人たちは、学校・企業、更には家庭内でも差別されており、結果として、彼らは性的マイノリティであることを隠さざるを得ない場合が多い。
LGBT法連合会共同代表の五十嵐ゆり氏(47歳、LGBT活動家)は、“日本はこの分野で国際基準から大きく後れを取っている”と語った。
ただ、同代表は、徐々にではあるが産業界からの支援が集まりつつあり、6月4日にはパナソニック(1918年創業の大手電機メーカー)が、23社目の日本の企業として同活動支援を正式に表明してくれた、と言及している。
なお、かかる活動家グループが積極的な動きに出た背景には、5月末に自民党内で開かれた会合で、LGBTQの人たちを貶める発言がなされたことがある。
例えば、簗和生衆議院議員(42歳、栃木県選出の自民党員)は、“人間は生物学上、種の保存が必要であるが、LGBTはこれに背く”と発言している。
また、伝統的な性(男女の役割)及び家父長制を主義とすることで有名な山谷えり子参議院議員(70歳、比例区選出の自民党員)は、男性の身体を持ったトランスジェンダーと自称する人たちが、心は女性なので女性トイレを使用させろとか、女性競技に参加させろと主張するのは“バカげた”話だと一蹴している。
(注1)LGBTQ:性的少数の人たちの総称。Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer / Questioning(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアまたは クエスチョニング)の頭文字からなる語。日本では、LGBTと称しているが、Q(不明)あるいはIntersex(間性)の頭文字も付記されることも多い。
(注2)HRW:米国に基盤を持つ国際的な人権NGOで、1978年設立。本部はニューヨーク。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、世界中すべての人々の人権を守ることを目的に、世界90ヵ国で人権状況をモニターしている団体。
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