11月18日付
『ユーラシアレビュー』、台湾
『台北タイムズ』紙は、ベトナムがこの1年だけで、南シナ海で領有権を主張する多くの環礁上に急ピッチで人工島を建設していると報じた。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS、1962年設立)傘下のアジア海洋問題透明性イニシャティブ(AMTI)が公表したレポートによると、ベトナムが直近1年で、南シナ海において領海内と主張する多くの環礁上に急ピッチで人工島を建設しているという。
同レポートによると、“2022年12月以来、南沙諸島(スプラトリー諸島)内の複数の環礁上に330エーカー(133.5ヘクタール、約1.3平方キロメートル)の人工島を建設した”という。
これは、“2022年末までの1年間に実施された420エーカー(170ヘクタール、約1.7平方キロメートル)に更に追加された工事規模である”とする。
そこで同レポートは、“2012~2021年間に行われた埋め立てが120エーカー(48ヘクタール、約0.5平方キロメートル)に過ぎなかったから、たった1年で3倍近くの埋め立て工事が行われたことになる”と報じている。
埋め立て対象となっているのは5つの環礁で、“最も大規模工事が進められたのはバーク・カナダ礁(柏礁、1987年よりベトナムが実効支配)で、210エーカー(85ヘクタール、約0.9平方キロメートル)の埋め立て工事によって、ベトナムが領有権を主張する環礁において最大規模の人工島となっている”とする。
その他の環礁は、ピアソン礁、ナミイット島、サンドケイ、テネント礁である。
更に、アリソン礁、コーンワリスサウス礁、ラッド礁、ディスカバリーグレート礁でも小規模ながら浚渫・埋め立て工事が進められていて、“近い将来、これらの環礁でも大規模工事が実施される可能性はある”と言及している。
なお、ベトナムの大規模造成工事にはポンプ浚渫船が投入されていて、浚渫・海底泥吸引・埋め立て工事が1船で賄える。
AMTIレポートによれば、米衛星写真より11月2日には2船がバーク・カナダ礁で作業していることが確認でき、また、10月27日には別の2船がピアソン礁に配備されていたという。
一方、南シナ海のほとんどを自国主権とする中国は、南シナ海においてベトナムが軍事拠点化を進めていて、同海域を不安定化させている張本人だとアピールしている。
中国のシンクタンク、南シナ海調査イニシャティブ(SCSPI、2019年にAMTIに対抗して設立)はX(旧ツイッター)に、“ベトナムは1970年代から南シナ海における前哨基地の拡大を絶えず行ってきている”とした上で、“今回の大規模埋め立て工事は始まったばかりで、今後も継続していくはずだ”と投稿している。
しかし、AMTIレポートによると、“実際は、中国が2013~2016年の間に行った大規模埋め立て工事は3,200エーカー(1,295ヘクタール、約13平方キロメートル)に及んでいて、これは今回ベトナムが行った工事規模の4倍にもなっている”とする。
その上で、中国は既にミスチーフ礁、スビ礁、フィアリークロス礁上に造った人工島に、ミサイル兵器・滑走路・航空機格納庫・レーダーシステム等の軍事施設を整備していて、完全に軍事拠点化している。
(注)レアアース(希土類元素):31鉱種あるレアメタル(希少金属、和製英語で英語圏ではマイナーメタルと呼称)の中の1鉱種。蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料。具体的用途は、超強力磁石の磁性体(モーター、バイブレーター、マイク、スピーカーなど)、ガラス基板研磨剤(ディスプレイ、HDDなど)、蛍光体(照明、ディスプレイ、LEDなど)、光ディスク(DVD、CD、Blue-ray Disc)、石油精製触媒、自動車用排気ガス浄化触媒、レーザー、原子力産業(制御棒、核燃料添加剤など)、光学ガラス(望遠鏡、顕微鏡、カメラ、プリズムなど)、ニッケル・水素電池等広範囲。
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