東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故から5年を迎えるが、廃炉に向けての作業は放射能汚染水問題や溶融核燃料の回収などについて具体的解決の目途が立っていない状況である。また、損壊した原子炉から放出された放射能により今後甲状腺癌の多発が予想されるなど、人体への深刻な健康被害が懸念されており、福島原発事故の影響の大きさと処理の難しさを海外メディアが報じている。
9日付
『ニューヨークタイムズ』紙(ロイター電)は、福島原発事故から5年が経過したが廃炉に向けての道程は厳しいと伝えている。
・5年前、史上最大級の津波が東電福島第一原発を襲い、複数の設備で核燃料棒がメルトダウンした。今でも福島原発の放射線量は非常に高いため、反応炉に入り溶融した燃料棒の塊を発見・除去することはできない。東電は、被災した1施設から数百本の使用済核燃料棒を回収するなど一定の進展をみせているものの、3施設で溶融した核燃料棒の所在を確認する技術は未だ完成していない。...
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9日付
『ニューヨークタイムズ』紙(ロイター電)は、福島原発事故から5年が経過したが廃炉に向けての道程は厳しいと伝えている。
・5年前、史上最大級の津波が東電福島第一原発を襲い、複数の設備で核燃料棒がメルトダウンした。今でも福島原発の放射線量は非常に高いため、反応炉に入り溶融した燃料棒の塊を発見・除去することはできない。東電は、被災した1施設から数百本の使用済核燃料棒を回収するなど一定の進展をみせているものの、3施設で溶融した核燃料棒の所在を確認する技術は未だ完成していない。
・東電は溶融核燃料棒を探索するため、水中や瓦礫上でも作動するロボットを開発中であるが、反応炉に近づくとロボットの配線や画像装置などが放射線で破壊されるため実用化できていない。
・ 廃炉に向けての最大の難問は約100万トンにも及ぶ放射能汚染水の処理であり、これまで数回貯水タンクから汚染水漏れが発生している。東電は、地下水が損傷した反応炉に流入して汚染されるのを防ぐため、世界最大の氷壁製造設備を2月に完成させ、年末までには氷壁の構築を開始する予定である。地下水流入を食い止めることは非常に重要で、これができれば第一段階は終了すると関係者は期待している。
・東電は、30~40年を要する廃炉に向けた作業のうち、約10%が完了したと言うが、専門家は溶融燃料を確認しない限り、進捗状況やその費用を評価することはできないと指摘している。
9日付
『USニューズワイヤー』は、福島原発事故の影響で今後1万人以上が癌を発症する見込みであるとの報告を紹介している。
・「社会的責任を果たすための医師団(PSR)」と「核戦争防止国際医師会議(IPPN)」は、取得可能な最良のデータを使用し子供、救援・除染作業員、一般市民について癌罹患率過剰を測定した。福島で仮設住宅に暮らす20万人の対象者に加え、放射性降下物で汚染された食物、土壌、飲料水を使う数百万の住民を調査した。
・福島原発事故は時として過去の出来事のように考えられているが、損壊した反応炉から放射能が放出され、毎日300トンもの汚染水が海に流れ込んでいるのが現実である。
≪調査結果概要≫
○子供
これまで福島県で116人の子供が悪性、急進性または転移性の甲状腺癌と診断されている。人口統計的には毎年1~5例が通常であると考えられる。
○作業員
原子力発電所内での被爆状況は改善されているが、2万5千人以上の除染及び救援作業員は高い放射線量を浴びており、東電が示すデータが正しいとすれば、約100人の作業員が放射能に起因する癌に罹患し、そのうち半数は死亡すると予想される。
○一般市民
それ以外の住民は微量の放射線降下物や汚染された食料品・飲料水によって影響を受け、日本全体では放射線量にもよるが9600から66000例に及ぶ癌罹患過剰が発生すると予想される。
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