トランプ米大統領はエジプトのシーシ大統領とホワイトハウスで会談。オバマ前政権下で緊張した両国関係を修復する姿勢を打ち出した。またトランプ大統領はエジプトは(困難な状況で)「素晴らしい仕事をしてきた。」我々はエジプト国民には遠く及ばない」等と元軍人のシーシ大統領の指導力を賞賛。
オバマ政権では軍出身で国防長官だったシーシ氏が2013年の反政府デモによりムルシ前大統領を追放、その後エジプトへの援助を2年間凍結し両国の関係が悪化していた。支援は再開したが人権問題等でも外交上の関係は冷えていた。
今回の会談でエジプトへの支援増額の約束はなく支援額は示されなかったがテロとの闘いで協力や中東和平交渉での連携を誓った。
両氏は首脳としての共通点が多くある。メディアと対立し、「邪悪な悪者」が国境をぬけ入国していると信じており、支持者に対し勝つことを鼓舞し掻き立てる手法も共通している。更に司法が民主主義への障害となっていないか目を光らせている点も類似しているという。
4月3日付
『ロイター通信』は「米国とエジプトは共にISと闘う:トランプ」との見出しで以下のように報道している。「米国大統領はオバマ政権で緊張したエジプトとの関係修復に乗り出し、シーシ大統領を招き会談、エジプトへの支援とISとの闘いへの協力を誓った。「皆には知ってほしいのだが、我々はエジプトには遠く及ばない」と執務室でエジプト大統領を讃えた。シーシ氏は2014年の就任以来の初の公式訪米。2人が合うのは昨年9月が初。シーシ氏はトランプが「悪のイデオロギーに強く対抗」することに謝辞を述べた。スパイザー報道官は、両大統領は「協力分野に関し正直な話し合いができた」とし、「協調と懸念事項両方に渡る話し合い」だったとしている。
人権団体は、ストリートチルドレンの活動中、2014年人身売買の容疑で拘束され33か月拘留されたエジプト系米国人Aya Hijazi氏の釈放を求めてきたが、この件はトランプとの会談では議題に上がらなかった。一方シーシと補佐官は拘束問題はトランプ政権により監視されるべき案件だと述べた。人権団体によるとシーシ政権は政治犯4万人以上を拘束したと推計している。ニューヨークでは国連大使のNikki Haley氏が、「トランプ政権は安全保障会議では人権に関し私に最大の支援をしてくれており、人権問題を見過ごさない」、とコメントしている。
ある米高官は、米国がエジプトの人権問題への批判を緩め、テロ対策に取り組む姿勢を見せたが、支援金の増額の意向はないと踏んだようだ。まだ未定だが支援金を期待していたエジプトは国務省予算28.7%削減のトランプ政策の一環により支援増資が無ければ落胆する事となるだろう、と述べた。
同日付ガーナ
『モダン・ガーナ』(AFP通信引用)は「画期的会談でトランプがエジプトは「素晴らしい仕事をしてきた」と称賛」との見出しで以下のように報道している。
「米国大統領は人権問題を保留させ、公式訪米は10年来となるシーシ大統領を執務室に暖かい挨拶で迎え、元国防長官の指導力を讃えた。会談は両国の長年の疎遠関係を解く象徴的会談となった。
2010年にムバラク元大統領がホワイトハウスを訪問した際には、中東和平交渉のためイスラエル、パレスチナ、ヨルダン首相らと会談、同大統領は数か月後にアラブの春で退陣、その後の両国関係は一層緊張し、オバマ政権は軍事支援を凍結、 2013年シーシ氏はムバラク追放と支援者への流血による掌握に至った。2015年軍事支援は戻ったが外交関係は硬直したままだった。
昨年両者が面会した際、トランプ氏はシーシ大統領を「素晴らしい男」と呼んだ。報道では、トランプが11月に選挙に勝利した際シーシが最も最初に祝辞を送ったという。
月曜の会談は、トランプ政権の人権問題への対処方針が垣間見られるもので、トランプ氏は「我々は多くの共通点がある。意見が分かれるものはそれほどない。」と述べている。人権問題が話合われたかとの質問には直接的答えはなかった事は人権団体からの怒りを買った。
国際支援への大幅予算減を発表したばかりの政府は、エジプト支援への具体的金額に言及せず、「十分に大きなもの」に維持すると述べるに留まった。
また、米政権はムルシのムスリム同胞団をテロ組織に指定するか検討中だとされ、政府高官によると、トランプはシーシ大統領の意見を聞きたいのだという。イスラエル・パレスチナ問題も議題となる。ヨルダンのアブドゥッラー王も水曜にホワイトハウスを訪問予定。」
同日付クウェート
『クウェートニュース・エージェンシー』は「米国は(エジプトに)ずっと遅れているとトランプとの見出しで以下のように報道している。
「執務室にシーシ大統領を招いたトランプは米国は(エジプトに)ずっと遅れている等とエジプトを賞賛。両国は、航空機、艦船、空母における軍事強化をしこれまで以上の協調関係を築くための会談を行った。シーシ大統領はトランプ氏のユニークな個性を賞賛、テロ対策への強い熱意を讃えた。」
同日付
『AP通信』は「米国はエジプトとの素晴らしい絆を築くとトランプ」との見出しで以下のように報道している。
「トランプ大統領は月曜のエジプト大統領との会談で、オバマ政権以来のエジプトとの冷めた関係を修復し「素晴らしい絆」を築くと述べ、米国とエジプトとの新時代を予感させた。
両者はトランプの本選挙直前にニューヨークで初対面しており、トランプ氏はシーシ大統領は「とても近しい存在」だと述べた。シーシ大統領はトランプの「ユニークな個性」を賞賛し、会談後「確信しているよ」と言った後はアラビア語で訳されなかったコメントを残していた。
米軍と経済支援からの恩恵が大きいエジプトの目的は明確で、「支援してくれたらこちらも支援する」というもの。シーシ政権は過激派への対策には米国の支援がカギとなると考えている。
世界銀行によると、エジプト経済は今年4%の成長が予測されるが、これは石油と天然ガスからの資金獲得に影響される。成長予測とは裏腹に、エジプトの失業率はムバラク政権への抗議で12.7%前後に上昇し今は9%、若者の失業が多く、30%が働き口がない。エジプトの人口の1割を占めるマイノリティのキリスト教徒はトランプ政権に期待し、エジプトの過激思想の高まりの抑止力に期待している。
トランプとシーシは両者とも、メディアと対立している。そして「邪悪な悪者」が国境をぬけ入国していると信じている。また、支持者に対し、勝つことを鼓舞し掻き立てる手法も共通している。また司法が民主主義への障害となっていないか目を光らせる点も同じ。」
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