米大統領選挙の投票日が今月8日と迫る中、ドナルド・トランプ氏が激戦州でヒラリー・クリントン候補にせまったり、ある全米世論調査では、共和党のトランプ氏支持率が民主党のクリントン氏を上回ったり、依然としてクリントン氏が有利な状況ではあるがその差は縮まっており、接戦が予測される週も出てきた。米連邦捜査局(FBI)が先月末にクリントン氏のメール問題の調査再開を発表して以降、クリントン氏の支持率は大半の有権者グループで低下、トランプ氏は大卒有権者で僅かに伸び、トランプ氏が女性に嫌われているためかクリントン氏は女性票では15ポイント前後の伸び。英国の調査機関はブレグジット支持者のように、異端者意識と扱いを懸念するトランプ支持者が世論調査に現れていない可能性もあり、世論調査も(トランプ氏が不正だというように)不確かなものだとも指摘している。
11月4日付
『ロイター通信』は「トランプがクリントンを猛追、ロイターイプソス全国調査」との見出しで次のように報道している。
ここ数週間でスイングステート(激戦州)ではトランプ氏が勢いついてきた。フロリダ州、北カロライナ州ではタイ、ミシガン州では差が縮まり、オハイオ州では激戦、ペンシルバニア州ではクリントン優勢である。もちろんクリントン氏に勝算はあるが、黒人層が2012年の投票率ほど低ければトランプ氏にも可能性はある、条件はフロリダと北カロライナ州での勝利があればだが。...
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11月4日付
『ロイター通信』は「トランプがクリントンを猛追、ロイターイプソス全国調査」との見出しで次のように報道している。
ここ数週間でスイングステート(激戦州)ではトランプ氏が勢いついてきた。フロリダ州、北カロライナ州ではタイ、ミシガン州では差が縮まり、オハイオ州では激戦、ペンシルバニア州ではクリントン優勢である。もちろんクリントン氏に勝算はあるが、黒人層が2012年の投票率ほど低ければトランプ氏にも可能性はある、条件はフロリダと北カロライナ州での勝利があればだが。クリントン氏はこれらの州で負けても勝つだろう。
クリントン陣営の心配は、期日前投票で同氏のリードがわずか8ポイントだということだ。(2012年のオバマ大統領の時は11ポイントだった。)フロリダ州では8ポイント(オバマは15)、オハイオ州では20ポイント(オバマは30)のリード。
期日前でクリントン票がオバマ時よりポイントが低い理由は不明だが、オバマ氏を支持した民主党支持者の票が意外と取れていない可能性がある。オバマ氏と違い黒人票が期待しずらい。黒人票が15ポイントまで落ちたら、クリントン氏の勝率が72%となり、20%へ落ちれば致命的となる。6割のヒスパニック層の支持を得ているのは救い。
11月3日付米
『USAトゥデイ』は「世論調査:トランプ氏がニューハンプシャ―州でクリントン氏に追いつく」との出しで以下のように報道している。
リアルクリアポリティクスの調査結果によると、ニューハンプシャー州で、トランプ氏がヒラリー・クリントン氏にタイと迫った。同州でこれまでで初めて。
アメリカ研究グループ調査では、トランプ(48%)、クリントン(43%)、WBUR世論調査では、40%-39%、サフォーク大学/グローブの世論調査は、42.2%-41.8%だった。4.4ポイントの差で両者はタイとみられる。先月のWBURやボストングローブ/サフォークの調査では2~3ポイントの差、他の調査では15ポイントの差だった。
WBURの最新調査でトランプ氏は、大卒有権者で2ポイント伸び、クリントン氏は女性票には強く13~15ポイントの伸びだった。トランプ氏の追い上げに対しクリントン陣営は、5月よりNHでキャンペーンし何ら懸念はない、本選挙のころはNHで僅差となるのは常で、想定内だとしている。
同日付米国
『CNN』は「世論調査は間違っているのか?」との見出しで次のように報道している。
クリントン氏があっさり勝利かと見られた先月、FBIはクリントン氏のメール問題捜査を公表し、ここにきて世論調査でのリードが揺らいでいる。しかし結果を覆すほどかと言えば、メールスキャンダルでは揺らがないとの見方が自然。最新のCNN・ORC世論調査では、クリントン氏のリードは5ポイントで、もちろんFBIの発表後である。選挙3週間前にして、アイルランドの賭け業者はトランプ氏の負けが確実だとし、クリントン当選の賭けに110万ドルの支払いをした。
一方、普通の政治家なら本選で本物の結果が出ると支持者に訴えるところだが、トランプ氏は調査が不正だと支持者に訴え続けている。そんなはずはないが、もし調査が間違っているとしたらどうなるだろう?
英国世論調査機関のジョン・カーティス社長はブレグジットの世論調査はかなり正確に出ていたという。数々の世論調査では、残留派は51~52%で、離脱派がリードした調査もあったし、ネット調査では常に半々だったという。(結果は51.9%と48.1%)調査は結果に対し2,3ポイントの差だった。FBIの捜査発表後もトランプ氏もこんなに迫っていない。しかし一方、1992年と2015年に英国の世論調査の誤差が7,8ポイントになった汚点があり、これはクリントン氏の誤差とも匹敵。そのため、トランプ氏勝利の可能性がゼロだとは断言できまい、とする。
また、米リサーチ会社「PRRI」のジョーンズ社長は、世論調査は数合わせでなく科学並みの技法なのだという。最初に「有権者層」のモデルを決め、その有権者は2008年か2012年の層と近似するかを判断。トランプ支持者は彼を支持していると表明するのをためらう可能性があり、嘘をつくかもれない、トランプに投票すると教えたくないかもれないので調査モデルに混乱が生じる。
更に、英国キャメロン元首相の政治ストラテジストだったスティーブ・ヒルトン氏もその可能性を指摘。トランプ支持者に典型的な現象で、与論調査で正確な数がつかめないのではと考える。ブレグジット支持者の「反モラル意識」と似たものがトランプ支持者にも見て取れるという。ブレグジット支持者は「差別主義、外人嫌い、偏屈者」だと批判されたように、クリントン候補が(トランプ候補に)幻滅した発言を繰り返す状況が近似しているとし、「選挙を覆すほど潜在支持者がいるかは不確かだが、オハイオ州、さらにミシガン州のようなタイレースを見ると、驚く結果もあり得る」としている。
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