米シアトル市の警察は、人手不足と犯罪率の上昇などの問題を抱えているにもかかわらず、市がワクチン接種を義務化したことから、最大400人の未接種の警官が解雇される可能性が出てきた。
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『デイリーメイル』によると、シアトル市警は、10月18日までにすべての警察官に新型コロナワクチンの接種証明書を提出しなければ職を失うという期限を設けた。8日の時点で292人の警察官が予防接種の証明書を提出していなかった。これは1080人の派遣可能な警察官の27%にあたる。また、派遣可能な警察官の10%に当たる111人の警察官が、免除申請の承認待ちなっている。もし、10月18日に合計403名の警官が全員解雇された場合、警察は37%の警官を失うことになり、すでに人材不足の警察にとっては致命的な打撃となる。
エイドリアン・ディアス警察署長は、10月13日から、残りのすべての警官を緊急電話の呼び出しに応答するために待機させる「動員計画ステージ3」の準備に入るよう警官に警告した。刑事や制服を着ていない人を含む、警察署で働く全ての職員が緊急電話に対応することになる。
72万4千人以上の人口を見守るシアトル市警察は、職員数がすでに1980年代以来の低水準にある。ブラック・ライヴズ・マターの抗議活動や警察の資金削減を求める「反警察的な風潮」が広がり、2020年に入ってからすでに少なくとも280人の警官が職を離れたという。
米『ワシントンエグザマイナー』によると、全国の警察署でワクチン接種が義務付けられたことにより、シアトルだけでなく、その他の地域でも警察の人員不足が深刻化する恐れがあるという。すでに多くの都市で911コールの待ち時間が長くなり、サービスが低下しているという。
ジョージ・フロイド事件後、全米の警察官に厳しい目が向けられるようになり、士気の低下、予算削減などが警察署での人員不足を招いている。今回大都市ではさらにワクチン接種が義務付けられたため、小さな町や郊外の働きやすい環境を求めて警官が都市部を離れる傾向が加速する可能性が出てきた。
昨年から数百人の警察官が退職したシアトルでは、2020年に、殺人事件が25年ぶりの多さとなった。また、人手不足により緊急電話への対応時間が長くなっており、8月には一部の犯罪への対応に1時間以上かかるという報告が市議会で審議された。
カリフォルニア州のロサンゼルス市でも、10月20日のワクチン接種義務の期限が近づいており、対応に迫られている。9月中旬までに、ロサンゼルス市警の職員2600人以上が宗教上の免除申請を提出しており、これだけの数の職員が実際に宗教上の信仰を持っているのかどうかについては懐疑的な見方がされている。
警察署にワクチンをまだ義務付けていない、または接種期限が迫っている一部の都市では、市長らが次のステップを検討する上で、警察官から激しい反発を受けているという。ニューヨーク市では、医療従事者と公立学校の従業員に接種を義化したものの、ニューヨーク市警は義務化の対象外とした。ニューヨークポスト市警のほぼ3分の1がワクチン未接種となっている。
米『テキサス・トリビューヌ』によると、テキサス州では、グレッグ・アボット知事が11日に、新型コロナワクチン接種の義務化を禁止する州知事令を発表した。民間企業を含むテキサス州のあらゆる団体が、従業員や顧客にワクチン接種を義務付けることを禁止するものである。同知事は、「新型コロナワクチンは安全で効果的であり、ウイルスに対する最善の防御策であるが、常に任意であるべきであり、決して強制されるべきではない」とツイートしている。
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