9月からの新学期の開始を数日後に控え、フランスでも子どもの間でのデルタ株の蔓延が懸念されている。0~9歳児の陽性数は、6月21日から27日は856例だったのに対し、8月2日から8日の間は8516例に増加している。
仏ニュースサイト
『ソルティラパリ』によると、9月2日から始まる新学期に向けて、ワクチン未接種の子どもたちの間で新型コロナウィルスの感染が急拡大するのではないかと心配されている。パスツール研究所は、デルタ株が現在フランス国内で新規感染者の98%以上を占めていること、デルタ株の感染力の高さ、12歳以下の子どもがワクチンを接種していないことなどから、9月にはフランスで毎日約5万人の子どもが感染すると予測している。
ヴァル=ド=マルヌ県の病院の集中治療室責任者、ジャン=ルイ・トゥブール教授は、「デルタ株は感染力が強く、予防接種を受けていない子どもたちがすぐに感染する。」と述べている。8月19日付のル・モンド紙に掲載された記事では、約30人の専門家が状況について警告し、「デルタ株が多数を占める国では、0~19歳の入院率が上昇している」と説明している。「フランスでは、過去1年間で、検査で陽性となった0~9歳児の1.2%が入院しており、その数は昨年の同時期の2倍、10~19歳児の4倍となっている。」と語っている。
しかし、医師たちは、幼い子どもたちの間で新型コロナウィルスの症例が増えても、重症化の増加につながることはほとんどないと説明している。現在までに、フランス国内で陽性となって入院した10歳未満の小児は56名で、うち7名が集中治療室で治療を受けた。
フランス小児科学会の会長クリステル・グラルゲン教授は、「幼いために高熱が出て入院が必要な子どももいる。気管支炎の場合は、数時間、病院で様子を見る必要がある。しかしほとんどの場合、重症化しない。」と述べている。
仏『ルフィガロ』紙によると、パンデミックが始まって以来、フランスで10歳未満の子どもは7人亡くなっている。一方、インドネシアでは、保健省のデータや専門家によると、新型コロナウィルスに感染した1200人以上の子どもが死亡しており、そのうち約半数が1歳未満である。これに対しフランス小児科医連合(SNPF)の会長であるブリジット・ヴィレイ医師は、「社会経済的なレベル、基本的な健康状態、医療などの問題がある」と指摘している。
仏『ウエストフランス』紙によると、米国疾病予防管理センター(CDC)が発表した報告書では、パンデミックが始まってからの米国での子どもの死亡数は約500人と報告されている。
フランス小児科学会の会長クリステル・グラルゲン教授は、「米国の子どもの死亡者数は、米国の子どもたちの健康状態との関連で分析しなければならない。残念なことに、アメリカの子どもたちのすべてが健康なわけではない。一部のマイノリティにとって、医療へのアクセスは困難であるなど、医療分野での不平等は大きい。肥満の割合の高さなどの影響も受けている。フランスとは比較できないアメリカの状況をそのままフランスに当てはめて親を不安にさせることは望ましくない。」と述べている。
また、「フランスの小児蘇生・救急グループと状況を確認したところ、直接コロナが原因で集中治療室に入院した子どものケースは、片手の指で数えられるほど。ベルギー、イギリス、イタリアでも同様の見解が示されている。感染した子供たちの大部分は、重症化しない。2021年の新学期を迎えるにあたり、保護者は子どもたちの感染について不安をあおる必要はない。」と説明している。
そして、「昨年のロックダウンでは、落ち込んだり、自殺したりする子どもたちが続出した。昨年の春には、思春期の子ども2人が病院内で自殺したこともあった。現在の感染拡大の子どもにとっての危険は、呼吸困難よりもメンタルヘルスであることを理解すべきだ。その点、新学期は対面式で、みんなが子どもとしての生活を再開できるようにすることが必要だ。」と指摘している。
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