2022年の世界の石炭生産量は、ウクライナ戦争に伴うエネルギー資源供給不安等を受けて、前年比+8%増の87億トンとなっている。しかし、温室効果ガス発生の元凶と言われることから、長期的に見れば減少の一途を辿るのは必至である。そこで、米エネルギー関係シンクタンクが、世界の石炭鉱山が閉山の憂き目をみることで、約100万人の鉱山労働者が失業する見込みだと推計している。
10月10日付欧米
『ロイター通信』、インド
『ジ・エコノミック・タイムズ』は、米エネルギー関係シンクタンクが、今後気候変動対策が強硬に進められることによって、温室効果ガス発生の元凶とされる石炭の生産量が大きく減少していくことで、世界で約100万人の鉱山労働者が失業する見込みと推計していると報じた。
米エネルギー関係シンクタンクのグローバル・エネルギー・モニター(GEM、2008年設立のNGO、本拠サンフランシスコ)は10月10日、今後強力に進められていく気候変動対策の一環で、温室効果ガス発生の元凶とされる石炭の生産量が激減していくに伴い、世界で約100万人の鉱山労働者が失業する見込みだと公表した。...
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10月10日付欧米
『ロイター通信』、インド
『ジ・エコノミック・タイムズ』は、米エネルギー関係シンクタンクが、今後気候変動対策が強硬に進められることによって、温室効果ガス発生の元凶とされる石炭の生産量が大きく減少していくことで、世界で約100万人の鉱山労働者が失業する見込みと推計していると報じた。
米エネルギー関係シンクタンクのグローバル・エネルギー・モニター(GEM、2008年設立のNGO、本拠サンフランシスコ)は10月10日、今後強力に進められていく気候変動対策の一環で、温室効果ガス発生の元凶とされる石炭の生産量が激減していくに伴い、世界で約100万人の鉱山労働者が失業する見込みだと公表した。
その中でも、現在世界の石炭生産量を担う中国(全体の約51%)及びインド(同約11%)における失業者が最多となるとしている。
GEMは今回の推計を出すに当たって、稼働中及び開発計画中の計4,300の石炭鉱山のデータを収集したが、現在従事している総勢270万人の炭鉱労働者のうち、約40万人が2035年までに、また約100万人が2050年までに失職することになるとする。
GEMによると、現在中国では計150万人が石炭鉱山で働いているが、東部の山西省(シャンシー)だけで24万人が犠牲になるという。
GEMの世界石炭鉱山追跡担当のドロシー・メイ氏は、“石炭鉱山の閉鎖は避けられない事象であるが、だからと言って、鉱山労働者だけが窮地に追い込まれるのは違う話であるので、関係政府がしっかり長期的な救済策を講じる必要がある”と強調した。
また、石炭鉱山計画専任のドゥリスケル・テイト氏も、“鉱山労働者は長い間、様々な圧力に一番多く耐えてきた人たちであるから、関係政府はもとより、石炭産業も積極的に支援策を立案・実施していくことが求められる”とコメントしている。
更に、パリ協定(注後記)で目標とされた、平均気温上昇を1.5℃(2.7℉)以下に抑えるためには、多くの石炭鉱山の閉鎖が必須で、その場合の鉱山労働者数は、僅か25万人まで削減されることになると推計している。
(注)パリ協定:第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて2015年12月に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定。産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2℃未満」に抑え、かつ、平均気温上昇「1.5℃未満」を目指すこと等が合意された。
(参考)2022年の石炭生産量世界ランキングは、①中国44億3千万トン、②インド9億4千万トン、③インドネシア6億9千万トン、④米国5億4千万トン、⑤豪州4億6千万トン、⑥ロシア4億4千万トン、⑦南アフリカ2億3千万トン、⑧ドイツ1億3千万トン、⑨カザフスタン1億1千万トン、⑩ポーランド1億1千万トン。
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