台湾総統選の行方(7月20日)
(郭台銘敗北の理由)
台湾総統選挙は当初は米国が支援する民進党・蔡英文に対して中国が支援する鴻海精密工業の郭台銘会長による“米中の代理戦争”となるかのように見られていたが、国民党の出馬争いで高雄市市長の韓国瑜が郭台銘を追い落とした。台湾では総統選の候補者は世論の支持率で決まることになるが、大方の予想を覆し韓国瑜が44.6%の支持率を獲得し国民党の候補者となった。韓国瑜は個人的な人気が高く、国民党というより韓国瑜個人の人気で勝利したとみられている。...
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(郭台銘敗北の理由)
台湾総統選挙は当初は米国が支援する民進党・蔡英文に対して中国が支援する鴻海精密工業の郭台銘会長による“米中の代理戦争”となるかのように見られていたが、国民党の出馬争いで高雄市市長の韓国瑜が郭台銘を追い落とした。台湾では総統選の候補者は世論の支持率で決まることになるが、大方の予想を覆し韓国瑜が44.6%の支持率を獲得し国民党の候補者となった。韓国瑜は個人的な人気が高く、国民党というより韓国瑜個人の人気で勝利したとみられている。韓国瑜には韓国瑜だから投票しに行くという熱烈な支持者がついているもようだ。一方、郭台銘会長は27.7%の支持率で韓国瑜に大差をつけられて敗北した。郭台銘は中国共産党の強い要望を受け、今回総統選に立候補したが、中国共産党の影があまりにも強く見えすぎて、有権者だけでなく国民党員からも敬遠されてしまった可能性がある。特に出馬レース直前にあった香港のデモ鎮圧映像を見せられ、中国の言う「一国二制度」の危うさを目の当たりにさせられたことで、台湾人の中国に対する警戒心が強まったことが人気の失速に直結したといえる。郭台銘は香港の反中デモの影響をもろに受けたと言っても過言ではない。現時点では米国が支援する蔡英文が有利というのが下馬評であるが、韓国瑜の動きにも注意が必要である。
(韓国瑜の動きに注目)
今後、中国は韓国瑜をコントロールしようといろいろな動きをみせてくる可能性がある。韓国瑜は郭台銘ほどではないが今年3月に香港の中央政府駐香港連絡弁公室を台湾地方首長として初めて訪問するなど親中派であることに変わりはない。中国が韓国瑜に対し全面的な支援を申し出てくる可能性は高いが、韓国瑜はポピュリストと言われており、中国の思惑より台湾世論の風向きに敏感であるため、中国の思い通りに動かない可能性もあるという。過去、韓国瑜は「国家安全は米国に頼り、市場は中国に頼り、技術は日本に頼る」という方針をあえて表明していることからもそのことは感じ取れる。韓国瑜が今後どのような動きを見せるのかは日本としても大いに注目して見ていく必要がある。
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台湾総統選・鴻海の郭台銘敗れる(7月16日)
来年1月の台湾の総統選挙をめぐる最大野党国民党の予備選で鴻海精密工業の前董事長・郭台銘が敗れた。
郭は高雄市長の韓国瑜に敗れた事を受け韓の勝利を祝福するとの声明を出した。
郭は敗北すれば離党して無所属から出馬するとの観測が出ていたが今後の出方については今のところ明らかにしていない。
台湾への脅しを矢継ぎ早に展開する中国(7月13日)
(内部崩壊を気にする中国共産党)
習主席は武力行使もありうるというスタンスで中国が建国100年を迎える2049年までに台湾を併合することに強い決意を示している。「祖国統一」の大義名分の下で台湾併合を進めていくことによって、習主席は党内と国内における自らの強固な基盤を維持していきたい考えである。一番避けたいのは内部からの分裂・崩壊であり、そのためにもチベット族やウィグル族反政府勢力、反乱分子の監視、弾圧、洗脳にはことさら力を入れている。...
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(内部崩壊を気にする中国共産党)
習主席は武力行使もありうるというスタンスで中国が建国100年を迎える2049年までに台湾を併合することに強い決意を示している。「祖国統一」の大義名分の下で台湾併合を進めていくことによって、習主席は党内と国内における自らの強固な基盤を維持していきたい考えである。一番避けたいのは内部からの分裂・崩壊であり、そのためにもチベット族やウィグル族反政府勢力、反乱分子の監視、弾圧、洗脳にはことさら力を入れている。香港デモで中国本土に対する反乱の種をいち早く見て取った共産党指導部が台湾を念頭に早い段階でデモ鎮圧に乗り出したのはこうした今の中国の危機感を如実に表したものと言える。
(台湾への脅しを矢継ぎ早に展開する中国)
台湾のトップの蔡英文が中米カリブ海諸国を経由して米国ニューヨークに立ち寄り、台湾と外交関係のある国々の国連大使と面会させるなどして厚遇していることに対し、中国外務省は「中国は米台間の公的な交流に断固反対する」と猛反発している。米国政府は8日、台湾に対し戦車108台22億ドル(約2400億円)相当売却し、さらには来年1月の台湾総統選挙での支援を約束した。中国は9日、売却を「直ちに中止する」よう米国に要求したが、米側はこれに取り合わず、「移転される軍備はアジアの平和と安定に寄与するものだ」と応じた。中国は「中国の主権と国家の安全保障を脅かすものだ」と米国を猛批判し、トランプ政権が仮に台湾に武器を売却した場合には関与した米企業に制裁を発動すると発表した。ただしどのような制裁を行うかについては明らかにしていない。さらに10日、台湾を念頭に中国軍が民間船舶を利用する大規模な海上輸送訓練を公開した。加えて12日、中国共産党系の「環球時報」は「中国は台湾や南シナ海の島々に上陸する訓練を行っている」との物騒な記事を掲載するなど台湾に対する脅しを矢継ぎ早に展開している。中国は、台湾に対して硬軟両様の戦術を講じており、例えば中国でビジネスを行う台湾人に対しては「31項目の台湾優遇措置」といった懐柔策も打ち出している。中国は来年1月の台湾総統選では中国は自らの息がかかったホンハイ元会長・カクタイメイを台湾総統選に担ぎだす動きを見せており、米国をバックにした蔡英文との一騎打ちも予想され、米中覇権代理戦争となりそうな雲行きを見せている。
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カクタイメイがホンハイ会長を退任・総統選挙へ(6月22日)
ホンハイ・カクタイメイ(テリーゴウ)会長が「今日の台湾経済の問題は政治にある。過去40年間に培った資源を今後4年間、台湾のために私はささげる」と語り、台湾総統選挙に立候補するためホンハイ会長を退任した。
香港で反中国の大規模デモが発生したことを念頭に入れてか「北京は中華民国の存在を正視すべきだ」と台湾への忠誠心をことさら強調してみせている。カクタイメイは親中国という見方を一掃するためにトランプ大統領などにもたびたび接近しているものの、実際のところ、習近平国家主席の親友であり、筋金入りの大中華主義者とみられている。...
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ホンハイ・カクタイメイ(テリーゴウ)会長が「今日の台湾経済の問題は政治にある。過去40年間に培った資源を今後4年間、台湾のために私はささげる」と語り、台湾総統選挙に立候補するためホンハイ会長を退任した。
香港で反中国の大規模デモが発生したことを念頭に入れてか「北京は中華民国の存在を正視すべきだ」と台湾への忠誠心をことさら強調してみせている。カクタイメイは親中国という見方を一掃するためにトランプ大統領などにもたびたび接近しているものの、実際のところ、習近平国家主席の親友であり、筋金入りの大中華主義者とみられている。5月の訪米中には、同行記者団に「台湾は中国の不可分の一部で、同じ中華民族に属している」と述べたことも記憶に新しい。日本人記者が「一国二制度」の見方を質問したところ「日本人がそんなことを聞くのはおかしい」と回答を避けたという。中国にとっては台湾を中国本土に統合する上でも「中国製造2025」を成功させるためにも必要な人材であることは間違いない。
台湾で5月10日に公表された世論調査では、国民党においてカクタイメイ20%、1位のカンコクユが35%で引き離された観があるが、これはホンハイの製造拠点の多くが中国に置かれていることが一時的に批判にさらされているためで、このままカクタイメイが2位に甘んじているとは思えない。今後も注視していく必要がありそうだ。
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