景気後退に喘ぐ中国は、一部の国からのビザなし訪問を認めたものの、キャッシュレス化が進み過ぎて、母国のクレジットカードでの決済が困難な外国人にはハードルが高く、インバウンド事業復興は困難とみられている。一方、現金決済が依然60%を占める日本では、円安の追い風もあってインバウンド事業が活況を呈しており、中国としても無視できない状況になっている。
7月17日付
『ロイター通信』は、中国がインバウンド事業テコ入れのため一部の国からのビザなし訪問を認めたものの、依然コロナ禍前のレベルを遥かに下回っていると報じた。
中国への外国人観光客数は、中国国家文化観光部(省に相当、2018年文化部・観光局が統合して発足)によれば、コロナ禍前の2019年には4,910万人を記録し、インバウンド産業界に1,313億ドル(約21兆80億円)の収益をもたらしていた。...
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7月17日付
『ロイター通信』は、中国がインバウンド事業テコ入れのため一部の国からのビザなし訪問を認めたものの、依然コロナ禍前のレベルを遥かに下回っていると報じた。
中国への外国人観光客数は、中国国家文化観光部(省に相当、2018年文化部・観光局が統合して発足)によれば、コロナ禍前の2019年には4,910万人を記録し、インバウンド産業界に1,313億ドル(約21兆80億円)の収益をもたらしていた。
しかし、同国の悪名高い“ゼロコロナ政策”のために、2020年初めから2023年初めまで外国人入国制限政策を執ったため、インバウンド事業は惨憺たるものになっていた。
そこで中国政府は昨年12月、インバウンド事業復興を目指して10ヵ国余りの国からの15日以下の短期滞在旅行者のビザを不要とした。
対象国は、フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・豪州・NZ・ポーランド・マレーシア・タイ等である。
中国最大手オンライン旅行会社「Trip.com」(1999年前身設立)によれば、6月24日現在でフランス・ドイツ・イタリア・マレーシア・タイからの旅行客数は昨年同期比+150%増となっているという。
また、豪州大手旅行会社「イントレピッド・トラベル」(1989年設立)の豪州・NZ担当イベット・トンプソン部長(2024年昇進)は、“中国向け豪州・NZ旅行者数が、ビザなし渡航政策発表の翌週に+133%も急増した”とし、“コロナ禍後の対策として、短期滞在のビザ免除措置は良い対策だ”と評価している。
しかし、中国国家移民管理局(1998年前身設立)公表データによれば、2024年上半期の外国人観光客数は1,460万人に止まっているだけでなく、そのうちの半分強の850万人はビザ免除の短期滞在者で占められている。
従って、円安の追い風を受けて、インバウンド事業が活況を呈している日本を気にせざるを得ない状況となっている。
(参考;日本のコロナ禍前2019年の外国人観光客数は3,188万人で、その後のコロナ対策で激減したものの、2023年には2,507万人まで回復し、更に、2024年1~5月実績は1,464万人と、2019年時ペースを上回るまでになっている。)
専門家によれば、短期滞在ビザ免除だけでは不十分で、以下のような諸問題を改善していく必要があると指摘している。
・欧米諸国との政治的緊張関係
・政府によるスパイ容疑取り締まり等の頑なな対応
・交通機関の乗車券、レストランの予約・精算、観光地の入場料等ほとんど全てが中国キャッシュレス決済アプリのWeChatやAlipayでしか行えず、中国語が堪能でない旅行者には使い勝手が困難。
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