スウェーデンは女性の社会進出が進み、近年は企業の管理職の3人に1人、大臣や国会議員の半数近くが女性であり、男女平等先進国として知られる。性別に対する平等が社会の隅々まで浸透している事を象徴するかのように、男性の性的暴行被害者を対象とした診療センターがストックホルムの病院に開設された。世界初の取組みをスウェーデンメディアが報じる。
『ローカル紙』は「ストックホルム南部にある病院は、特に男性のレイプ被害者のための救急センターを世界で初めて設置した。このセンター開設は男女平等の取組みの一環で、性別の平等を患者のケアや介護でも確保する」と報じる。「ローカル紙」によると、地域最大の救急医療ユニットをもつこの病院はこれまでも24時間体制で女性のレイプ被害者の救急診療を行っていたが、女性以外の全ての性別の犠牲者に対し、医療ケアだけでなくカウンセラーが精神的な面から集中的な心療ケアも行う。
「このセンター開設で、女性、男性、トランスジェンダーなど、あらゆる性別の性的暴行被害者に門戸を開いた」と
『ラジオスウェーデン』は報じるように、スウェーデンの性別の平等への取組みは男女の枠を超えた一歩先をゆくものである事がわかる。日本でも今年渋谷区が同性婚カップルに「パートナー」の証明書を発行する条例が成立し注目を集めたが、スウェーデンもパートナー法を採用し、性的少数派の権利を保証している。
男性や少年の被害ケースが2014年には370件報告されたが、専門家は実際にはもっと多いと見る。「ラジオスウェーデン」は「性暴力被害者は性感染症のケアを必要とするが、特に男性やトランスジェンダーの人々は直ぐに医療ケアを受けようとしない傾向が特に強い」ため、「(男性を対象としたセンターがなければ)女性以外の被害者は医療ケアを受けようとしないと思われる」と同病院の医師の指摘を引用する。「水面下でケアを受けられなかった犠牲者が適切な支援を得られるようになるだけでなく、男性の性的虐待が偏見なく認識されるようになる」事が期待されると「ローカル紙」はその意義を語る。
スウェーデンの男女平等は、地方自治体の職員にクォータ制を導入する平等法(1986年制定)によって進んだと同時に、個人の自立を求める伝統的な価値観や、社会福祉制度を支える税収入を要する社会的ニーズが、女性の社会進出と合致した。この時に待機児童問題が解決された結果、スウェーデンの出生率は上昇した。スウェーデンでは男女平等の観点で制度が整備され、その結果性的少数派の権利の保証が推進される点が、少子化対策の観点から待機児童が議論される日本と最も違う点である。
また、家族の形態どうだろうと、子供を育てる親を支える制度を徹底的に整備した結果、出生率が上昇した。多様性を認める事がプラスの効果を産んだなら、性別の多様性を認め壁を取り払うこの医療センターの存在の社会的意義は大きく、プラスの効果を産みだす可能性が高いと言えるのではないか。
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