【あの一言】
前駐米大使・杉山晋輔
前駐米大使・杉山晋輔 台湾は、いったいどういうステイタスになっているかがあいまいになっている。大陸(中国)が台湾に対して武力侵攻したら内政問題だと言う。米国が軍事介入をしようにも、独立国家でないと集団的自衛権は行使できない。そういう複雑な状況にあるから中国は武力侵略で台湾を統一することはやめるべきであり、両岸関係はあくまでも平和的に話をしていくべき。
2023/05/14 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
前駐米大使・杉山晋輔 一方で核のない世界にコミットし、もう一方で日本は拡大抑止を求めないといけない。違うことを同時にやっているようにも聞こえるが、G7というのは米英仏という核兵器国と、日本を含めたそうでない非核兵器国が一緒に世界の主要な経済国として集まる場所。そこで核兵器国と非核兵器国が一緒に議論をすることは大事。
2023/05/14 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
前駐米大使・杉山晋輔 オバマ時代に対中政策で2回大きな失敗をした。1回目は2009年11月、オバマ大統領訪中時の米中首脳会談の共同声明でコアインタレスト(核心的利益)という言葉を明記してしまったこと。そこには「共産党政権の維持」、「領域の保全」、「経済の発展」という3つが書いてあり、オバマ大統領はこれにサインをしてしまった。「共産党政権の維持」というのは1党独裁を続けるということであり、場合によっては独裁強化を意味するのかもしれない。「領域の保全」は自分達が主張している領土・領海・領空を自分達がさらに確定的に支配するということを意味するかもしれない。「経済の発展」は国際的なルールによらず経済的な拡張政策をとるということを意味しているかもしれない。そういう要素を持っていることはどうも間違いなさそうだということに気付き、次の時からはこれは書かないようになった。(2回目は)「新型大国関係」という言葉は、何度もこの言葉を使ったが、ある時、中国人のある人が「これは核心的利益のことを意味している」と話し、「それではまずい」という話になった。その後、ケリー国務長官が訪中し、2014年2月に「新型大国関係には言及しない」と言った。その翌月、オバマ大統領が初めて「尖閣諸島には日米安保の第5条が適用される」と明言した。この時系列は偶然ではなく政治的な意味合いが大きい。
2021/10/17 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
前駐米大使・杉山晋輔 (岸田総理は)特に対中政策について、大きな絵姿を描いて「日本の主張はここにある」ということを米国に堂々と言うべき。共に手をつないで一緒にやるべきところは一緒にやる。バイデン政権は責任とか役割の分担を公正にやっていきたいということを最初から言っていたが、日本から見て米国に対して「日本はこうする」と言わなければいけない大事な時に来ている。
2021/10/17 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
前駐米大使・杉山晋輔 日本の経済界の方々がこの30年間くらいでものすごい努力をして米国への直接投資をしてきた。それまで1位だった英国の直接投資の額を凌駕して、今では世界1位になっている。これは慈善事業をやっているわけではなく利益を追求して直接投資という経営判断に至ったということだが、現地に行き、現地の部品を使い、現地の人たちの雇用を上げ、完全に現地の社会・経済に溶け込んで不可分なものになった。その結果、グラスルーツの米国からの対日感情が非常に良くなった。実はそのバックには中国の台頭がある。中国との関係を考えると、日本が一番地政学的に近いし付き合いも長いので、その陰に中国との関係があることは間違いない。
2021/10/17 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
前駐米大使・杉山晋輔 1979年に台湾関係法が制定され、最後のところに書いてあるのが、台湾海峡の国際情勢が緊張した場合には、大統領は直ちに議会と「何をするべきなのか」ということを相談しなさいと規定されている。台湾関係法によって米国が台湾の防衛義務を負ったということではないが、仮に中国の方から何らかの形で武力行使が行われることがあれば、米国がそれに応じて武力の行使をするだろうという想定は十分に成り立つ。逆に言うと、台湾が武力の行使をしないときに米国の方から先んじて武力の行使をするということは、まず考えられない。
2021/10/17 BSテレ東[NIKKEI 日曜サロン]
|