【あの一言】
吉野・ノーベル賞受賞・どうするニッポンの科学技術
三菱ケミカルホールディングス取締役会長・前経済同友会代表幹事・小林喜光 日本経済がこの30年間どうだったのかというのを見ると、GDPも中国に完全に抜かれた。企業価値というか時価総額というのも、かつて30年前は日本が10番中7番まで入っていたという時代があったが、今はほとんどGAFA、ネット系の企業が高く評価されている。それと同じようにGDPのみならず企業のアクティビティ、あるいは国家としての力も下がっていって、貧すれば鈍するという形で研究開発費も比例して下がってきている。基礎的な運営費交付金というお金の部分で、非常に自由な発想でやる研究が減っている。一方では、競争的資金も1兆円に対して6000億とか入っている。全体が縮んでいる中でどうフォーカスして、もう少し日本は日本なりに強いところに一定程度の力を入れるというような手法を取るのも1つの方法。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
東京工業大学栄誉教授・2016年ノーベル医学生理学賞受賞・大隅良典 この数年間、交付金という定常的な大学の運営費と研究費がなくなってきたことが非常に大きく響いている。本当に大学の研究者は、一般の方がほとんど理解ができないぐらい研究費がないのが当たり前になってしまった。逆に言うと、お金を取ろうと思うとそれにものすごい時間をかけないといけなくなっていて、今の大きな問題は研究者自身が研究する時間が非常に少なくなっているということ。大学人が大学の研究を楽しむということができにくくなっている。これも非常に大きな問題で、それがひいては若い人が教授を見てああいう風になりたいとは思えないという事態がずっと続いている。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
総合科学技術イノベーション会議・議員・上山隆大 論文の数、あるいは重要度の高い論文の数が減っているということはここ数年言われてきて、非常にシリアスな問題。近年、博士課程に行く学生の数が日本においては減っている。これは諸外国と比べて明確な違いがある。その問題を単に若い人たちの問題と捉えるよりは、むしろ日本全体の問題として何故こういうことが起こっているのかということを今、分析をしながら、とりわけ中堅から若手の人たちに対する手厚い支援をしなければいけない。特に基礎研究への支援をしなければいけない。なぜならば、かつてとは違って基礎研究そのものがそのまま応用研究につながっていき、産業界あるいは社会的な価値につながっていくことが明確になってきている現状においては、明らかに方向転換をしなければいけない時代にきている。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
日本学術会議若手アカデミー代表・九州大学大学院准教授・岸村顕広 ゴールをはっきりと設定した上でこれはチャレンジに値するという判断を下したら、そこに向かってきちんとチャレンジが続けられるという環境があった。それを10年、20年のスパンできちんと会社がサポートできた。そういう研究環境があったというのがやはり重要。こういう成果がこれからも続くような環境を産業界、大学、あるいは研究機関の方でも確保していかなければいけない。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
日本科学技術ジャーナリスト会議副会長・瀧澤美奈子 吉野先生のリチウムイオン電池というのは人類の持続的な発展に欠かせないもので、温暖化が進む中で再生エネルギーを安定的に使う分散型のエネルギーネットワークに不可欠になってくる。日本においては災害時の役割も期待されると思うが、そういった社会的な意味が非常に強い不可欠な技術であるということが評価されている。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
総合科学技術イノベーション会議・議員・上山隆大 2000年辺りから(日本人のノーベル賞の受賞者の)数が増えてきたというのは、ノーベル賞という科学技術のトップに対して与えられる賞の性格が少しずつ2000年位から変わってきたことがある。丁度2000年頃からIC回路とか導電性ポリマーとか、割と産業に近いところの業績が認められるようになった。今回の吉野先生の場合もリチウムイオン電池の特許ということが相当焦点になっているということで言えば、0を1にする研究と1を100にする研究と。後半の1を100にする研究というものに大きな評価の軸が移ってきて、その結果として日本の伝統的なものづくりの流れの中でもノーベル賞の対象が拡大してきた。おそらくこの流れはこのまま続いていくだろうし、その意味では日本のノーベル賞受賞者の数は今後も増えていくのではないか。
2019/12/15 NHK総合[日曜討論]
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