【あの一言】
米国大統領「エルサレムを首都に」どうなる中東情勢
元シリア大使・国枝昌樹 日本が筋を通すと言っても、政治家が大きなことを言って結局、効果を失わせてきているという局面が残念ながら日本の過去の歴史にはあった。そこは慎重にして、私たちは筋を通しながらやるべきことをやる。そして地域の安定化を目指していく。信頼を醸成することに努力すべき。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
慶應義塾大学教授・渡辺靖 中東情勢の不安定化は日本経済に与える影響が非常に大きいので、米国に対して自制を求めていくことは必要。同時に米国がこの地域で孤立することによって生じる中東情勢の不安定化もある。パレスチナ問題に利害関係を持っている欧米諸国と同じトーンで米国を批判することについては、慎重になった方が良い。北朝鮮情勢もあって日米同盟の結束が求められているため、細心の注意をはらってバランスを持って対応していくことが必要。(トランプ政権は)論調を見ている限りでは北朝鮮問題は最優先事項という扱い。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
放送大学教授・高橋和夫 (シリア内戦は)結果的にアサドを支えたロシアとイランが勝った。残る問題はISではなくてロシア、米国の支援を受けて北部で大きな役割を果たしたクルド人をどう扱うのかということ。シリアにおいてイランの影響力が伸びてくるということに対するイスラエルの危機感がありイスラエルがこれにどう対応するのかという問題がある。それにシリア上空の制空権を確保しているロシアがどう対応するのか。どこまでイスラエルがシリアにおけるイランの攻撃を許すのかという問題もある。イラン、クルド、アサド、イスラエル全てと口をきける立場にあるプーチン大統領がすべての鍵を握っている。イランと口のきけない米国がどう外交を展開するのかは全く見えない。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
慶應義塾大学教授・渡辺靖 (トランプ大統領の次の一手は)まずはイランを徹底的に封じ込めておくこと。ロシアの影響力をどれだけ抑えていけるかも鍵になる。ただ、米国にとっての最優先外交案件は北朝鮮問題で、そこではロシアの協力は不可欠。ISを掃討する時にシリア・アサド政権に目をつぶったのと同じように、北朝鮮問題があるうちはロシアが中東で幅を利かせることについても強い態度はトランプ大統領は取れないのではないか。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
放送大学教授・高橋和夫 トルコはエルドアン大統領のもと、ロシアに接近する動きを見せている。主なエルドアン大統領の論調は、米国にくっついているサウジアラビアに対する厳しい批判であり、こうしたすでにあった構造をさらに深めたのが今回のエルサレム首都宣言だった。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
東京外国語大学教授・黒木英充 この数年間でもシリア内戦等を通じて米国の影響力は低下してきたが、今回の宣言によって米国の影響力は決定的に落ちた。米国の内政の要因が今回の宣言に影響したという話があったが、1年前、トランプ政権成立の直前から次期イスラエル大使には、トランプが不動産ビジネスで付き合ってきた破産管財人の弁護士がすでに指名されていた。クシュナーを中心にサウジアラビアやパレスチナをめぐり様々な動きがあり、中東全体のことはあまり考えないまま、予定してきたものが遂行された形。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
日本エネルギー経済研究所研究理事・保坂修司 ISがイラク・モスル、シリア・ラッカを失い勢力が減退している中で、こういう発言が彼らにとって新たな大義を与えてしまう恐れは非常に高い。米国の権益、米国に従うような国々の権益が攻撃を受ける可能性が高まったと言わざるを得ない。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
慶應義塾大学教授・渡辺靖 米国側の見方としては、サウジとかエジプトといったような親米的な国家は、今回の発言があっても一気に反米に転じることはないだろうという現実的な読みもあった。その一方で、トランプ政権の中にはこれまで国務省に外交を委ねてきたが、今、娘婿のクシュナーなどを中心にホワイトハウス主導で新しいアプローチを模索している。その中で、もう少しパレスチナ側への妥協を進めていくのではないかという見方もある。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
慶應義塾大学教授・渡辺靖 ロシアゲートでトランプ政権の支持率が低迷している中で、キリスト教保守派やイスラエルロビー、議会、特に共和党との関係改善、求心力の回復を狙った。来年秋に中間選挙を控え、それを踏まえた政治的な判断だと思うが、米国の安全保障専門家からは非常に激しい批判も出ている。大使館の移転については、時期は明確化していないので曖昧にしておくということ。エルサレムについてもイスラエル側の永久不可分の首都であるという表現は用いていない。今後、パレスチナ側に歩み寄る妥協の余地も少し残している。
2017/12/17 NHK総合[日曜討論]
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