既報どおり、バイデン新政権は、トランプ前政権同様、中国対峙の姿勢を標榜しているが、前政権と大きく違うのは、四ヵ国戦略対話(クワッド会議)開催を主導する等、アジアの同盟国との連携を重要視していることである。それは、新政権の国務長官・国防長官の2閣僚の初外遊先として日本・韓国を選択したことにも如実に表れている。
3月14日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「バイデン大統領、アジア重点政策の下、中国対峙のためアジア同盟国との連携再構築」
ジョー・バイデン大統領(78歳)の外交政策には、2つの重点政策がみてとれる。
それは、トランプ前政権のやり方に不満を持っていたアジア同盟国との連携を再構築し、そしてその上で一致団結して中国に対峙していくことである。
この証左となるのが、新政権の閣僚の初の外遊先として、日本と韓国を選んだことである。
そして、米及び日韓それぞれとの2+2会談(外相・国防相)は正しく、直後の3月18日にアラスカで開催される、米閣僚と中国外交トップとの初会談の前奏曲となる。
米中閣僚級会談は、両国間の基本的立場及び相互に越えてはならない一線について協議する場と考えられ、同会談に出席するアントニー・ブリンケン国務長官(58歳)は、“21世紀最大の地政学的実験”と表現している。
また、米高官も、“1回限りの会談”で以て、米国が中国側と協働できる分野について確認する目的だとしている。
疾風のように現れた外交施策は、まず3月12日に開催されたクワッド会議サミットで始まっている。
すなわち、アジア太平洋政策を重点に捉えるべく、米国が日・豪・印メンバー国と連携を図るものであり、バラク・オバマ政権時のアジア軸足政策を復活させるとともに、トランプ前政権が行った、ぶっきらぼうで商談を進めるようなアジア同盟国へのアプローチを是正しようとするものである。
ブリンケン国務長官は先週、下院外交委員会の公聴会で、“中国が、我々米国からだけでなく、世界中から悪評となっていることを聞けば聞く程、我々にとって事態を変更しうる機会が増えることになろう”とコメントしている。
ただ、これは中々容易ではないと言える。
何故なら、まず中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題からいち早く立ち直って景気回復させているのに対して、ほとんどの西側諸国は依然感染症問題から抜け出せない状況にあることである。
更に、中国は国防費を大幅に増額して、米国の軍事力に追い付こうとしていることから、世界の中での中国の存在感がより高まっているからである。
一方、バイデン政権が、ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官(67歳)の最初の訪問先を日本としたことは、トランプ前政権が日本の駐留米軍費用の増額請求に固執したことでぎくしゃくした両国関係を改善しようとする確たる目的があるとみられる。
そして、ホワイトハウスが3月12日、バイデン大統領が最初に迎える首脳が菅義偉首相になったと発表していることからも窺える。
なお、バイデン政権の2閣僚が今週日・韓高官と2+2会談を持って、米国による中国対峙のための後援を期待しているが、両国はそれぞれ中国との貿易高が最大となっており、複雑な様相を呈することはあり得る。
ただ、両国とも安全保障面では米国頼みとなっていると言える。
そこで、日本との2+2会談では、日本が最も気にしている、中国との領有権問題がある尖閣諸島について、もし中国が一方的に攻めてきた場合、米軍は支援してくれるのかが重要課題のひとつとなろう。
また、韓国との会談においては、トランプ前政権が全面否定していた、大規模レベルの米韓合同演習の復活はあり得るのかが焦点になろう。
3月15日付ドイツ『ドイチェ・ベレ(DW、ドイツ国営通信)』(1953年設立):「バイデン新政権閣僚、初の外遊先としてアジア訪問」
バイデン政権の新閣僚であるブリンケン国務長官とオースティン国防長官が3月15日、初の外遊先として日本を訪問する。
この外交政策は、トランプ前政権の偏った外交政策と決別し、多国間関係の重視、同盟国・友好国との関係再構築を図ろうとするもので、特にアジアにおける政策に重点を置く意向である。
両閣僚は3月16日、茂木敏充外相(65歳)及び岸信夫防衛相(61歳)と外交政策及び安全保障問題について協議する。
次に両閣僚は3月17日、韓国を訪問して、特に北朝鮮問題について打ち合わせる。
日本、韓国それぞれの協議事項には、駐留米軍費用の負担額についても交渉することになろう。
なお、オースティン国防長官はその後、インドを訪問して安全保障問題につき協議する意向である。
一方、ブリンケン国務長官は一旦帰国した後、3月18日にはアラスカで、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の同行を得て、中国外交トップと初めて会談することになっている。
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