11月10日付
『バイス』オンラインニュース(1994年設立):「ベトナム政府がバイデン次期大統領を歓迎していない理由」
世界の多くの首脳が、先週の米大統領選で勝利を収めたジョー・バイデン民主党候補を祝福しているが、ベトナム政府は依然何のコメントも発信していない。
ファム・ビン・ミン外相(61歳)の直近のツイートは11月6日付で、ニュージーランドの新外相就任を祝うメッセージだけであり、また、11月10日午後現在、外務省の公式サイト上でも米大統領選のことは一切触れていない。...
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11月10日付
『バイス』オンラインニュース(1994年設立):「ベトナム政府がバイデン次期大統領を歓迎していない理由」
世界の多くの首脳が、先週の米大統領選で勝利を収めたジョー・バイデン民主党候補を祝福しているが、ベトナム政府は依然何のコメントも発信していない。
ファム・ビン・ミン外相(61歳)の直近のツイートは11月6日付で、ニュージーランドの新外相就任を祝うメッセージだけであり、また、11月10日午後現在、外務省の公式サイト上でも米大統領選のことは一切触れていない。
共産党一党のベトナムでは、独立系メディアは制限されており、また、事実上高官が自由に発言できる状況にない。
シンガポールのシンクタンクISEASユーソフ・イシャー研究所(1968年設立)のル・ホン・ヒープ特別研究員(ベトナム問題専門)は『バイス』のインタビューに答えて、“米国において正式決定がなされていないため、ベトナム政府は少々慎重になっている”とした上で、コメント発信を拒んでいる中国に倣って、東南アジア諸国(ASEAN)の動きを注視しているものとみられる“とコメントした。
ASEANでは、既にインドネシア、シンガポール、フィリピンがバイデン氏の当選を祝福しているが、他国は沈黙したままである。
米国防大学(1946年設立、ワシントンDC)東南アジア政治・安全保障研究専門のザーチャリー・アブーザ教授は、“ベトナム政府はトランプ大統領の二面性をとても不満に思っていたとみられる”とし、“何故なら、ビジネス的に事を進める首脳だと理解していたものの、その重要な対象である環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から突然離脱したことに対して、非常に立腹していたから”だと解説した。
一方、NZビクトリア大学(1897年設立、首都ウェリントン)ベトナム研究専門のヌィエン・カーク・ギアン博士号取得候補者は、バイデン氏が、米国が離脱した後に組織された“環太平洋パートナーシップ協定に関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、注後記)”に再加盟してくれば、ベトナムにとって歓迎すべきことと期待していると考えられる、とコメントしている。
ただ、トランプ政権が米中貿易紛争で中国産品に高関税を賦課したお陰で、多くの国際企業がベトナムに生産・販売拠点を移転してきていることから、今回のCOVID-19感染流行問題で景気後退してしまったものの、ベトナム経済界としては来年にすぐさま復活できると期待している。
更に、トランプ大統領が、昨年の第2回米朝首脳会談の開催場所としてハノイを選択してくれたことで、同会談事態に大した進展はなかったものの、米政府がベトナムを信頼してくれた証拠だとして大いに評価している。
そしてもちろん、トランプ政権下で、南シナ海における中国との領有権問題を抱えるベトナムにとって、度々米軍艦を派遣してくれたことで、中国に対して大いに牽制となったことも感謝しているはずである。
アブーザ教授によれば、バラク・オバマ政権下(2期)では僅か5度ほどであったが、トランプ政権下では20度以上も米軍艦が派遣され、航行の自由作戦を展開しているという。
しかしながら、同教授によれば、“マイク・ポンペオ国務長官(56歳)が直近でベトナム訪問して間もなく、米通商代表部がベトナムにおける為替操作について調査に乗り出したことに対して懸念しており、貿易を有利に運ぶような為替政策は取っていないと全面否定している”という。
なお、ベトナムメディアが大統領選前に市民にアンケートを実施したところ、約6万人の回答者のうち79%もがバイデン氏よりトランプ氏を支持するとしており、民間レベルではトランプ氏の人気が高い結果となっている。
また、“2020年アジア系米国人に対する投票調査”の結果、回答者1,569人のうち、ベトナム系米国人のみがバイデン氏ではなくトランプ氏に投票したとの結果となっている。
(注)CPTPP:2016年に署名まで漕ぎ着けた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から、2017年初めに米トランプ政権が離脱を決定したことよりTPPが頓挫したため、残った11ヵ国(日本、シンガポール、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、豪州、NZ、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ)によって2018年末に形成され、2019年末に発効した自由貿易協定。世界の国内総生産(GDP)の約14%を占める巨大自由経済圏で、加盟国間での関税の撤廃等によってヒト・モノの移動がより活発化。
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