国際人権団体のアムネスティ・インターナショナル(本部:英ロンドン)は12日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問に授与した同団体最高の人権賞を撤回したことを発表した。ミャンマー軍のイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの残虐行為やメディア弾圧などに対し、スー・チー氏が無関心であり、大いに失望したと批判している。
73歳のスー・チー氏は、1991年にノーベル平和賞を授与されるなど、多くの賞を受賞してきた。しかし、ミャンマー軍が70万人超のロヒンギャを放逐して以来、過去の授賞の撤回が相次いでいる。スー・チー氏は先月、カナダ名誉市民の称号を剥奪されたが、この他にも、これまで各地の大学や地方自治体などから与えられた多くの賞が撤回された。
アムネスティ・インターナショナルは、スー・チー氏がまだ自宅軟禁状態にあった2009年、同氏に対し、人権擁護活動で最も活躍した個人に与えられる「良心の大使賞」の授賞を決定し、軟禁解除後に授与したが、同賞を無効にしたものである。...
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73歳のスー・チー氏は、1991年にノーベル平和賞を授与されるなど、多くの賞を受賞してきた。しかし、ミャンマー軍が70万人超のロヒンギャを放逐して以来、過去の授賞の撤回が相次いでいる。スー・チー氏は先月、カナダ名誉市民の称号を剥奪されたが、この他にも、これまで各地の大学や地方自治体などから与えられた多くの賞が撤回された。
アムネスティ・インターナショナルは、スー・チー氏がまだ自宅軟禁状態にあった2009年、同氏に対し、人権擁護活動で最も活躍した個人に与えられる「良心の大使賞」の授賞を決定し、軟禁解除後に授与したが、同賞を無効にしたものである。同団体は11日にスー・チー氏に決定を伝えたが、今のところスー・チー氏側からの公式の反応はない。
アムネスティ・インターナショナルのクミ・ナイドゥ事務総長は、同団体がスー・チー氏に宛てた書簡で、「我々は今、あなたが希望、勇気、そして不滅の人権擁護の象徴ではなくなったことに深く失望している。」と述べている。書簡はさらに、「アムネスティ・インターナショナルは、あなたの“良心の大使賞”の受賞者としての地位継続を正当化できないため、非常に悲しいことだが、これにより同賞の授与を撤回する。」と伝えた。
スー・チー氏は、15年近く自宅軟禁の状態におかれながら、自国の軍事政権に対し立ち上がった民主化の象徴として世界的に称賛されてきた。しかし、彼女がロヒンギャ問題に対し沈黙を続けたことで、その名声は大きく損なわれた。
アムネスティは、2017年8月以来、数千人のロヒンギャがミャンマー西部のラカイン州で虐殺され、さらに多くの人が拷問などの迫害を受けたとしている。国連もミャンマー軍の残虐行為を「ジェノサイド(組織的大量虐殺)」と呼び、非難した。これに対しミャンマー政府は、同国軍の行為はテロとの戦いの為に必要であると反論した。
アムネスティはまた、スー・チー氏の政党「国民民主連盟(NLD)」が、2015年の総選挙に圧勝して政権を担うようになって以来、人権活動家やジャーナリストらが拘束され、脅され続けており、表現の自由が失われたと非難している。
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