トランプ米政権は5月、2015年に主要6カ国がイランと結んだ核合意からの離脱を表明したが、8月にも同国に対する経済制裁を再び科す構えだ。制裁が発動されると、イランで最も有名な輸出品の1つであるじゅうたん産業が、大打撃を被る恐れがある。
オバマ前政権が2016年にイランに対する制裁を解除した後、じゅうたんの輸出は急激に増加した。イランの国立じゅうたん産業センター(INCC)によれば、2017年3月から2018年1月の間の輸出額は3億3,600万ドルで、米国が最大の輸出先となっている。イランのじゅうたん産業は、数十万人の熟練技術を持つ織り手を雇用する重要業界であり、米国の制裁の再発動により、業界基盤が崩壊する恐れもあると強く懸念されている。...
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オバマ前政権が2016年にイランに対する制裁を解除した後、じゅうたんの輸出は急激に増加した。イランの国立じゅうたん産業センター(INCC)によれば、2017年3月から2018年1月の間の輸出額は3億3,600万ドルで、米国が最大の輸出先となっている。イランのじゅうたん産業は、数十万人の熟練技術を持つ織り手を雇用する重要業界であり、米国の制裁の再発動により、業界基盤が崩壊する恐れもあると強く懸念されている。
イラン政府は米国を国際司法裁判所に提訴したが、INCCは、国民の文化の象徴であり、知的財産権でもあるじゅうたんという芸術産業に対し、制裁を発動するのは誤りであるとして、別途米国を国際裁判所に提訴し、制裁対象から外すよう求めていくとしている。
ロンドンのシンクタンク王立国際問題研究所で北アフリカ・中東地域を担当するサナム・バキル氏は、「イランのじゅうたん産業は本当に重要だ。」として、「歴史的に、非常に強力な産業で、地元の雇用を相当程度支えている。」とその影響力を指摘した。
米CNNは、イラン南部のシラーズで、約5,000人の織り手を雇い、父が創業したじゅうたん製造会社ゾランバリ・カーペットを経営するレザ・ゾランバリ氏のインタビューについて報じている。同氏は制裁の再発動後、「織り手の50%は、他の生計手段を見つけなければならない。彼らの間には生計についての不安が広がっている。」と窮状を説明した。
ゾランバリ氏は、8年前の国連決議による制裁発動時に味わった商売上の痛手の経験から、制裁が8月に再発動されれば、何が起きるか予測がつくと述べた。2010年までにゾランバリ・カーペットは毎年3,500平米のじゅうたんを米国向けに製造し、その量は同社事業の2割を占め、十分儲けが見込めた。しかし、制裁発動後に事態は一変し、欧州でも銀行の取引規制などが実施され、生産量が完全に落ち込んだ。
2016年に核合意が成立し制裁が解除されると、同社の業績は急激に回復し、昨年1月から今年の6月の間に、米国向け生産量が再び2割を占めるようになる。それがトランプ政権の制裁の再発動により、一気にまた消えてしまう恐れがあるという。
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