【Globali】
船舶用燃料油の硫黄濃度既定の改定で2020年から原油価格が1バーレル当たり90 USドルまで上がるか(2018/05/27)
原油価格は現在、WTI原油価格が67.5 USドルで今後イランに対するアメリカの6か国核合意破棄でイランからの原油輸出が制限をうけるので原油価格が上昇することが予想されている。それに加えて、2020年から国際海事機関(IMO)の規制により船舶用の燃料油に含まれる硫黄成分濃度の許容値を3.5%から0.5%に引き下げることを計画されている。
これまで船舶用の燃料油は石油精製処理で生産される最も重い、しかも高硫黄成分濃度の残渣油が使われている。この対策としては石油製精工場で残渣油の脱硫設備の建設が必要となるが、あと2年後の2020年までには間に合わない。他の手段として、船舶の燃料を硫黄分の濃度の高い燃料重油から硫黄分濃度の低い軽油(ジィーゼル油)かLNGに変えることが考えられる。燃料をLNGに変えるためには船舶の駆動システムに大幅な改造が必要になるので、燃料を硫黄分濃度の低い軽油に変えることが短期的な対策として最も現実的である。...
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これまで船舶用の燃料油は石油精製処理で生産される最も重い、しかも高硫黄成分濃度の残渣油が使われている。この対策としては石油製精工場で残渣油の脱硫設備の建設が必要となるが、あと2年後の2020年までには間に合わない。他の手段として、船舶の燃料を硫黄分の濃度の高い燃料重油から硫黄分濃度の低い軽油(ジィーゼル油)かLNGに変えることが考えられる。燃料をLNGに変えるためには船舶の駆動システムに大幅な改造が必要になるので、燃料を硫黄分濃度の低い軽油に変えることが短期的な対策として最も現実的である。
国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、2020年までに軽油の船舶用需要は174万バーレル/日となり現状需要より100万バーレル/日に増加し、重油の需要は、現状の320万バーレル/日から130万バーレル/日に減少する。船舶で使用する石油製品の全体に占める割合は約5%で、燃料の重油から軽油への変化は石油精製の製品生産量分布図を塗り替えることとなり、軽油製品は不足傾向となり重油製品は過剰となる。長期的には石油精製工場の改造、増設などで軽油、重油の需要と供給はバランスするが、2-3年の短期間では軽油製品が不足ぎみとなる。
モーガン・スタンレーのアナリストによると軽油の増産のため、原料の原油需要が増え、IMOの規制が実施される2020年までに原油価格が上昇することが懸念される。北海から生産されるブレント原油にいたっては現状バーレル当たり76 USドルが90 USドル以上になると予想されている。
なお、シェール・オイルを増産して船舶の軽油需要に備えるという案もあるが、シェール・オイルは一般の原油に比べて軽質でガソリン生産には好都合であるが軽油の生産には不向きである。
いずれにせよ、一般消費者にとっても今後2,3年間は原油価格の大幅な上昇と、それに伴うガソリン、軽油などの石油製品のある程度の価格上昇は覚悟する必要がある。
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