米上院の共和党関係者が9日に明らかにしたところによると、上院共和党の税制改革法案については、法人税率の引き下げや個人向けの減税の内容が、先日の下院共和党の改革案と大きく異なる見通しであることが分かった。
上院の財政委員会の関係者らによれば、上院共和党案は、最高35%の法人税率を20%に引き下げる等の項目を盛り込んで、2019年から実施するとしている。先週発表された下院共和党案は、法人税減税の時期を2018年としていたので、1年先送りとなる。また、個人事業主に新たな法人税率を設定する代わりに税額控除を認める他、個人の所得税の最高税率を39.6%から38.5%に引き下げる一方、7つの所得区分を維持し、州・地方税控除は廃止する。上院財政委員会は、来週早々に同案の審議を始める予定である。
下院の歳入委員会は9日に修正案を公表し、可決している。共和党議員24人全員が賛成し、民主党議員16人全員が反対した。今後、本会議に送られる前に議事運営委員会で再び修正される可能性があるが、本会議で審議の上、最終的な採決が行われる。共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務は、来週本会議で採決を行うとの見通しを示した。
米国の株式市場は9日、マイクロソフト等のハイテク株の下げも影響したが、上院共和党の税制改革案が、法人税率引き下げの1年先送りを盛り込んだことを嫌い、反落して取引を終えている。また9日のニューヨーク外国為替市場でも、米ドルが主要通貨に対し、6日ぶりの安値を付けている。減税実施の遅延や提案された改革が骨抜きにされる可能性は、いずれも米ドルの下落につながると市場関係者は見ている。
税制改革はトランプ大統領にとって、内政上の最大の重要懸案事項の1つだ。バージニア、ニュージャージー両州の知事選と、ニューヨーク市長選の3つの選挙で、共和党は民主党に連敗し、本件の緊急度はさらに高まっている。
ほぼ全ての米国人に影響が及ぶ重要法案だけに、上下両院案が異なるのは問題である。両院共和党は、それぞれが11月第4週の感謝祭の休日前に採決を行った上で、年末のクリスマスまでに調整を行うつもりだが、スケジュール的には非常に厳しくなっている。ホワイトハウスや上院の一部の共和党議員は、法人減税の先送りには強く反対しており、今後の調整には難航も予想される。
閉じる