25日の住民投票は、自治区を構成する3つの地域と、クルド人とイラク政府の両方が領有権を主張する紛争地域で行うとされている。クルド人自治政府は、イラク政府の住民投票は違憲であるとの警告を繰り返し無視してこれを強行する構えであり、自治政府が最高裁の命令に素直に従うかについては、今のところ不透明である。
イラクのハイダル・アル=アバーディ首相は、もし住民投票が暴力的な事態を招けば、軍事介入の用意があると述べた。...
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25日の住民投票は、自治区を構成する3つの地域と、クルド人とイラク政府の両方が領有権を主張する紛争地域で行うとされている。クルド人自治政府は、イラク政府の住民投票は違憲であるとの警告を繰り返し無視してこれを強行する構えであり、自治政府が最高裁の命令に素直に従うかについては、今のところ不透明である。
イラクのハイダル・アル=アバーディ首相は、もし住民投票が暴力的な事態を招けば、軍事介入の用意があると述べた。一方、クルド人自治政府のマスード・バルザニ議長は、もしイラクやシーア派の軍隊が、現在ペシュメルガとして知られるクルド人部隊の支配下にある紛争地域、石油が豊富な都市キルクークに侵攻しようとすれば戦うと明言している。イラクのクルド人は、住民投票によって政府が交渉のテーブルにつき、独立への道が開かれることを期待するとしているが、アル=アバーディ首相は、住民投票によって交渉が複雑化するだろうと否定的な考えを示した。
イラク中央政府と同国北部のクルド人自治区の対立については、米国と国連、トルコ、イラン等が、分離独立よりも両者の交渉によって解決すべきと説得を試みている。米国は、「住民投票を紛争地域で行うことは、特に挑発的であり、地域の不安定化に繋がる。」として、投票の延期をクルド人に呼びかけた。またトルコは18日、イラク国境付近で軍事演習を開始したことを発表している。トルコにもクルド人は多く、同国政府はそのゲリラ組織等と戦ってきたが、イラクのクルド人の独立の動きにも反対しており、今回の住民投票に対し圧力をかける狙いがあると見られている。
クルド人はトルコ、イラク、イラン、シリア等の中東各国に分かれて広範に存在する、独自の国家を持たない世界最大の民族だ。その人口は3,000万人とも4,000万人とも言われ、宗教的には大半がイスラム教でスンニ派が多い。イラクでは北部に住み、長い間独立国家の夢を持ち続けてきた。サダム・フセイン時代に迫害を受け、1980年代には5万人が殺害され、その多くが化学兵器の犠牲になったとされている。湾岸戦争後、1992年に自治政府を設立し、2003年以降、その地域は憲法上も自治区として保証されたが、今なおイラクの一部である。IS(イスラム国)との3年以上の戦争を経て、独立への思いをさらに強めてきた。
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