土星探査機カッシーニの任務が最終段階に入った。合計5回にわたって土星に接近して観測を行う。今回はその1回目。これまでに知られていない土星の大気構造データが得られると期待されている。9月には土星大気圏に突入して完全に破壊されることになる。
カッシーニは、現在、土星の複数の輪と大気との間を周回しながら、13日の午前4時22分(日本時間午後2時22分)、土星の雲の上1600kmをかすめて進んだ。これまでで最も土星に接近した。大気上層の外部にあるガスを採取する予定。
カッシーニプロジェクトに携わる欧州宇宙機関(ESA)の科学者ニコラス・アルトベリ氏は、「土星は約75%が水素、残りの多くがヘリウムで構成されている」と説明。...
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カッシーニは、現在、土星の複数の輪と大気との間を周回しながら、13日の午前4時22分(日本時間午後2時22分)、土星の雲の上1600kmをかすめて進んだ。これまでで最も土星に接近した。大気上層の外部にあるガスを採取する予定。
カッシーニプロジェクトに携わる欧州宇宙機関(ESA)の科学者ニコラス・アルトベリ氏は、「土星は約75%が水素、残りの多くがヘリウムで構成されている」と説明。また、BBCニュースに対しては、「重いヘリウムが下に沈んでいると考えられる。土星は、太陽から吸収する以上のエネルギーを放射しているが、それは、土星に失われている重力エネルギーがあるということ。今回の接近で、上層部の水素とヘリウムを正確に観測できれば、土星内部を構成する物質の全体構造をも知ることができる」と語った。
カッシーニは、第2回目の接近を行う火曜日に今回のデータを地球に送信する。機体に大気が触れると、引っ張る力が発生して機体は推進力を失う。安定飛行を維持するには反動推進エンジンを使う必要があるが、対応は充分可能であると科学者たちは考えている。今後、9月15日に予定されている大気圏最終突入までに、残り4回の接近観測を行う。
本プロジェクトで解明したい課題の1つが土星の自転時間(1日の時間)。約10時間半であるとは言われているが、より正確な時間を科学者たちは知りたいと考えている。土星の磁場と自転軸の傾きのずれを見つけることで計測できるとされるが、現段階では、この2つがずれることなくほぼ完全に並んでしまっている。
同プロジェクトに関わるNASAの科学者リンダ・スピルカー氏は次のように語った。「私たちが知る磁場理論では、ずれがなければならない。磁場ができるには、土星内部の金属性を帯びた水素層が流れを保たなければならない。それがなければ磁場は消えてしまう。ずれの発見を妨害する何かがあるのか。それとも、磁場理論そのものに欠陥があるのか。いずれにせよ、自転時間を正確に計測することができない」
今後も観測チームはこの課題に取り組むとスピルカー氏は言う。
カッシーニプロジェクトは、NASA、ESA、イタリア宇宙局による共同事業。打ち上げから20年が経過した今、間もなく機体は燃料切れで制御不能になる。土星の衛星であるタイタンやエンケラドスへの衝突だけは避けたいと科学者たちは考えていたが、それを避ける唯一の方法が土星大気圏への衝突だった。
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