トランプ米大統領は7日、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)などの諸国が5日にカタールとの国交を断絶したことに伴い、カタールのタミム首長、UAEのムハンマド・アブダビ首長国皇太子と個別に電話会談を実施した。大統領は、テロ対策の重要性を再度強調した上で、カタールに対しては、ホワイトハウスで関係国の首脳会談を開くなど、自ら仲裁を行う用意があると申し出た。
ホワイトハウスは声明を出しているが、トランプ大統領はタミム首長との電話会談で、地域の全ての国が、テロ組織への資金供給を遮断し、過激派のイデオロギーの拡散を防止するために協調することが重要であると述べた、としている。また大統領はカタールやサウジアラビア等の6カ国による「湾岸協力会議(GCC)」と、「米国とGCCの強力なパートナーシップ」がテロを撲滅し、地域の安定を推進するのに非常に重要であると述べた。さらにもし必要であれば、ホワイトハウスでの関係国の首脳会談等を行い、その意見の相違を解決するために仲介を行うと提案している。
カタールのメシャール・ビン・ハマド・アル=サーニー駐米大使が、米国メディアのインタビューに答え、カタールは諸国に陸路や海路を塞がれて、トランプ大統領の支援を切望しており、米国がサウジアラビア他の諸国を説得して欲しいと思っていると述べた。
トランプ大統領が中立の仲裁者をするというのは、僅か1日前の6日のコメントのスタンスと明らかに異なっていた。ツイッターでは、カタールの孤立は「テロの恐怖の終わりの始まり」かも知れないとして、先月自分が会った各国の首脳は、テロリストの資金供給源であると言っており、皆カタールを非難していると述べ、それを容認するような発言をしていた。諸国はアルカイーダやハマス、ムスリム同胞団等のグループを支援したことを理由にカタールとの断交に踏み切ったが、カタールは一貫してそうした支援を強く否定してきた。
カタールは、米国の地域の軍事的戦略に大きな役割を果たしているが、大統領の同国へのツイッターによる攻撃は、ホワイトハウスや国防総省の職員にとっては早朝のショックであり、サウジアラビアには冷静な対応を呼びかけ、政権自らが火消しに追われた。彼らが米国とカタールとの従来からの関係を強調し、修復に動いたことは、カタールに米国はその戦略的パートナーを見捨てないと説得するに十分だった。米国はカタールにアル・ウデイト空軍基地を持ち、約10,000人の米兵を駐留させている。基地の状況には変化はないとして、アラブ諸国とカタール間の亀裂が、軍事上の関係に影響するものではないと両国は示したかった。米国務省は、F-15戦闘機のカタールへの売却計画にも変更はないと語っている。
一方、トランプ大統領は、UAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子にも電話をして会談した。トランプ大統領はやはり、地域の安定を推進する「湾岸協力会議(GCC)」の維持の重要性を繰り返したが、ここでは過激派への資金供給を遮断したり、テロを撲滅したりすることを決して犠牲にしないように強調した、とホワイトハウスは声明の中で述べている。カタールを牽制したとも受け取れる。
これまではトランプ大統領のツイッター、ホワイトハウス、国務省、国防総省等がそれぞれ発信して混乱を招いていたとも言えるが、米国の政権からの統一した立場の説明があったことは良いことである。
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