米国のワシントンポスト紙とABCニュースが共同で行った直近の世論調査によると、トランプ大統領が1日、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を正式に表明したことに対し、国民の59%が反対していることが明らかになった。これに対して賛成は28%と約半数にとどまった。
トランプ大統領は、「パリ協定は米国に害をもたらすので離脱する、協定の離脱が米国の雇用を増やし、経済を助ける。」と主張したが、42%の人が離脱は米国経済にとって良い効果をもたらさないとし、32%が良い効果をもたらす、20%は変わらないと答えており、懐疑的にとらえている人が多いことが分かった。さらに55%の人は大統領の決定は米国の国際的な指導力を損なうとし、国際的な指導力を強化するとした人の18%を大きく上回った。23%の人が変わらないと回答している。
支持政党別に見ると、共和党支持者では離脱に賛成が67%、反対が25%だったのに対し、民主党支持者は賛成8%、反対82%と反対が大きく上回っている。無党派層も賛成22%、反対63%だった。今回のトランプ大統領の離脱表明は、中核となる支持者に対し直接アピールするものであったが、一般的には非常に評判の悪い決定であったと言える。
トランプ大統領の決定に対しては、その後も様々な反応がある。中国に駐在する次席の米外交官であるデービッド・ランク氏が、決定に抗議して辞任したと本日報じられた。ランク氏は、27年のキャリアを持つベテランの外交官で、前アイオワ州知事のテリー・ブランスタッド氏が先月駐中国大使として着任するまでの代理大使を務めており、同大使館のトップだった。同氏は大使館職員に対し、米国の離脱を中国人に公式に伝えることは、自分の良心が許さないと述べ、辞任を申し出て受理された旨説明した。ランク氏の辞任は、トランプ政権による今回の決定に対する外交当局者の不安を示している。
米国の多くの州知事や市長は、自治体レベルでの温暖化防止活動を加速させている。北京で開催されているクリーンエネルギー関連フォーラムに出席している、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事は、事態の緊急性に鑑み、トランプ大統領の決定は一時的なものにならざるを得ないと予想している。知事は6日、この問題に関し、米連邦政府はリーダーシップを取るのをやめたが、中国や欧州そして米国内諸州の知事らがその穴を埋めており、科学、事実、国際的な圧力等により、最終的に米国は、温室効果ガスの排出削減に再び協力する努力をしなければならなくなるだろう、と述べた。カリフォルニア州は、クリーンエネルギー技術の開発などで中国の科学技術省と協力する他、排出権取引でも中国と協力し、気候変動問題に効果をもたらす貿易・投資機会を探っていくことを発表している。
また5日、ブルームバーグ前ニューヨーク市長の呼びかけで、米国内の9人の州知事や120人余の市長、約900の企業・大学・投資家などが連名で、声明文「私たちはまだ参加している(We Are Still In)」を国連に提出し、パリ協定で約束した温室効果ガスの削減目標に向けて引き続き取り組むことを宣言した。参加した企業には、アップル、アマゾン、フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、ティファニー等の巨大グローバル企業が含まれている。
ニッキ・ヘイリー米国連大使は、オバマ前大統領が米国にとって厳しすぎる温室効果ガス削減目標を設定したことを非難し、トランプ大統領も気候が変動していると考えていると述べ、そもそも達成不可能な目標を与えられたことが米国企業にとって不公平だと言っているのであり、環境保護について気にしていないわけではないと大統領を擁護した。但し、トランプ大統領が1日に離脱を表明した際のスピーチでは、「気候変動(Climate Change)」という言葉の使用を避けていた。
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