北朝鮮は4月29日に新たな弾道ミサイル発射を試みたが、失敗したと見られている。ミサイルの発射直前には、ティラーソン米国務長官が国連の閣僚級の会議において、北朝鮮への圧力強化を呼びかけていた。トランプ米大統領は、こうした状況を受けて東南アジア各国首脳と電話会議を行い、協力を要請した。
30日には、核やミサイル開発計画を進める北朝鮮の脅威に対し、各国が連携してこれを抑制するために、タイ、シンガポール両国の首脳と個別に電話会談を行い、両者をワシントンに招待した、と政府当局者が明らかにした。
またこれに先立ち、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とも電話会談を行い、同大統領をホワイトハウスに招待した。会談は「非常に友好的」に行われたとされる。米国とフィリピンの関係は緊密なものであるが、この動きは同盟国や政治評論家たちを驚かせた。...
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30日には、核やミサイル開発計画を進める北朝鮮の脅威に対し、各国が連携してこれを抑制するために、タイ、シンガポール両国の首脳と個別に電話会談を行い、両者をワシントンに招待した、と政府当局者が明らかにした。
またこれに先立ち、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とも電話会談を行い、同大統領をホワイトハウスに招待した。会談は「非常に友好的」に行われたとされる。米国とフィリピンの関係は緊密なものであるが、この動きは同盟国や政治評論家たちを驚かせた。
ドゥテルテ大統領は、その厳しい薬物取り締まりにより多くの人々が殺されたため、西側諸国や各種人権団体から厳しく批判されているからである。また米国は、法律と政策によって、人権侵害の疑いのある人物に対し、ビザ発行や入国を禁止しているため、国家元首として特別扱いされるのでなければ、米国への入国も許可できないという指摘もある。
先週あるフィリピンの弁護士が、大統領と11人の官僚を相手取って、大量殺人や人道に反したことにより国際刑事裁判所に訴訟を提起した。大統領はこれを一蹴し、薬物との闘いは絶対にやめないと断言している。訴状によれば、大統領が南部ダバオの市長に就任した1988年まで遡って9,400人の殺人事件を挙げ、フィリピンで行われている超法規的処刑または大量殺人について追及している。昨夏の大統領就任後には、約8,000人が死亡したと言われる。
ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅戦争を批判したオバマ前大統領の下で、米国とフィリピンの関係は悪化した。オバマ氏に対し、タガログ語で暴言を吐くなどしたため、両首脳の会談がキャンセルされたこともあった。ドゥテルテ大統領は、オバマ前大統領だけでなく、ローマ法王や大統領になる前のトランプ氏に対しても悪態をついたことがある。
その後ドゥテルテ大統領は中国寄りの立場を取り、自らの主義・主張を変えたとも言ったが、フィリピンの世論は従来から米国との協調を重要視し、南シナ海の中国の拡大主義に反対であるため、これとぶつかった。今回の電話会議などを通じ、最近では対米姿勢を軟化させつつある。
ドゥテルテ大統領を招待したことについて、強い人間を好むトランプ大統領の性格に目を向ける専門家もいる。大統領は先日国民投票により大きな権力を得た、トルコのエルドアン大統領の勝利を祝した最初の西側指導者であり、エジプトで反体制派に無慈悲な弾圧を行ったアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領を祝したりもしている。
そうしたフィリピンからの支援を得ることについては、非常に議論の余地がある。プリーバス大統領首席補佐官は、人権はもはやトランプ政権の関心事ではないのかと、テレビのインタビューで問われた際、これを強く否定しつつ、北朝鮮の核開発問題が非常に深刻であるため、今はアジアのできるだけ多くの国々から一定レベルの協力を得ることが先決である、と語った。
トランプ大統領は現在、日本の安倍晋三首相や中国の習近平国家主席と定期的に接触している。北朝鮮の同盟国であり、最大の貿易相手国である中国は、北朝鮮の国連の決議に違反した核兵器や長距離弾道ミサイルの開発に懸念を表明するようになったが、それまで中国とは貿易面での問題もあり、北朝鮮問題について協力をすることが後手に回ってしまった、とトランプ大統領は述懐している。
オバマ政権時代、財務省に勤務していた制裁問題に詳しいアダム・スミス氏は、イランの核開発を阻止することから得られた教訓について触れ、多面的な圧力が大きければ大きいほど効果的だと言う。同氏はトランプ大統領が、フィリピンを含め、国連の制裁措置を超えた行動を取ることに消極的な国々にまで協力を要請していることは注目に値し、それは多国間協力体制の良いスタートとなると述べた。
共和党重鎮で外交政策の専門家であるジョン・マケイン上院議員は、「トランプ大統領は、北朝鮮に対する先制攻撃を検討しているとは思わない。それは同盟国の韓国を切迫する危険にさらすことになる。もちろん、そのオプションを排除することは愚かかも知れないが、それは究極の最終オプションでなければならない。」と語った。
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