(1)反保護主義の文言の削除:保護主義に傾く米国を2日間の会議で他の19カ国は説得できず、国際貿易を自由かつ開かれたものにするというこれまでの文言は共同声明から削除された。スティーヴン・マヌーチン米財務長官は、過去の共同声明にあったことは必ずしも自分の立場とは関係ないとし、トランプ米大統領はすでに「アメリカ第一」を目指し、米国は主要貿易協定を脱退し、米国の労働者にとってより公平なものにするために一部の貿易協定を改革する必要があると主張し、輸入税を新たに提案し、特定の貿易協定を再検討するとしている。G20当局者の話では、国際貿易は世界経済の成果のほぼ半分を占めており、7月にハンブルグで開催されるG20首脳会合で貿易問題が再検討される可能性があると述べた。
(2)気候変動対応の文言の削除:トランプ米大統領が地球温暖化に対して、米国内の産業を傷つけるために中国が作り出した「詐欺」であり、温室効果ガス排出を抑制することを目的としたパリ気候協定から脱退すると公約していることから懸念されていた2016年のG20で盛り込まれた2015年のパリ協定での気候変動に対応する資金準備に関する文言について、米国とサウジアラビアの反対により削除された。尚トランプ米政権が気候変動予算を排除し、空気や水の保護のための政策を制限しようとしていることから3月16日の予算教書では米環境保護庁予算が31%削減されている。
(3)反通貨安競争の文言は残す:一部の事前報道で削除が懸念されていた通貨市場で競争力の低下を避けるためや競争力を確保する目的で為替レートを使用しないなどのこれまでの為替政策の文言については、文言を残し再確認することで継続性を示している。
(4)金融業界向け規制:銀行業界向け規則(バーゼルIII)において必要最低資本を大きく引き上げない最終決定を支持するという金融業界向けの規制への約束を確認した。
G20について3/18の
『The Washington Post』は以下の通り評している。保護貿易の危険性について声明に盛り込むことを拒否したトランプ米政権の好戦的な政策は英国やドイツ等の長年の同盟国との亀裂を生むだろう。トランプ米政権は、米国が保護主義に反対するという文言を拒否することで、既存の貿易ルールを受け入れず、世界中の貿易相手国に対してより敵対的なアプローチをとることができるという明確な意思表示を行った。 トランプ米大統領は米国と世界各国の貿易関係の条件を見直すための具体的な措置をまだ進めていない。G20はブッシュ政権時代に初めて会合を持ったが、その目的は、貿易、税金、金融規制、国家安全保障など、各国が直面する問題についてグローバルな合意を得ることにある。G20会合での共同声明は正式な条約ではないが、各国の合意がどこにあるのかを伝えるものだ。 トランプ大統領の貿易政策の批判者は、この政策が米国経済を孤立させ、米国内の商品は値上がりし、輸出依存の米国企業の経営に悪影響を与える可能性があるとしている。トランプ米大統領の貿易政策についての不安は今回の会議で急速に高まった。
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