3月15日付
『サウス チャイナ モーニング ポスト』:
トランプ大統領は最初に公布した移民政策によって世界中から非難を浴びたため、規制や禁止事項のルールを緩和したが、成功するかどうかは未知数であり、新たな移民政策が発効されてからその真価が問われることになる。
しかし、すでにアメリカ国内だけでなく世界中でのトランプ政権の移民政策の不人気ぶりは目に余るほどにもなってきている。
アメリカに住む日系アメリカ人にとっても移民問題というのはまさに無視できない存在で、避けて通れない議論でもあり、かつてあのルーズベルト元大統領でさえも発行したという忌まわしき大統領令9066号の恐ろしい記憶が蘇るという。
大統領令9066号は第二次世界大戦中に発効されたもので、これにより12万人にものぼる日系アメリカ人は強制収容所に捕虜として入れられ、アメリカ政府により仕事や農地もすべて奪われたという。
アメリカ政府は謝罪の気持ちをこめて40年もの歳月をかけ、被害に遭った日系人一人一人に2万ドルの補償金を支払ったが、彼らの心にはいまだに深い傷が残っているという。
「日系アメリカ人であること」(現題名:Being Japanese American)の著者であるジル・アサカワ氏は「9.11のときのイスラム教徒への偏見やあらゆる憎しみや敵意が再びアメリカ中で起きているような気がします。あの事件のときもアメリカ国内の日本人コミュニティーは真っ先にアメリカ社会へ“人種差別への反対”のメッセージを送りました。」と述べていて、それ以来日本人コミュニティーとイスラム教徒のコミュニティーは親密な関係になったという。
トランプ政権の支援団体のスポークスマンであるカール・ヒグビー氏も「今のトランプ政権の移民政策はイスラム教徒への差別そのものであり、第二次大戦中の日本人への差別や偏見の記憶を呼び起こすもので、あの政策はアメリカ国内での人種差別政策の前例といってもいい。」と「FOXニュース」の番組内でコメントしている。
ジル・アサカワ氏は「日本人コミュニティーはあの強制収容所の記憶を忘れないために、毎年2月に記念イベントを開いています。今では日本人以外の参加者が増えていて、イスラム教徒とは“今まさにトランプ政権のやろうとしていることは、第二次世界大戦中の日本人強制収容所の政策と何ら変わらない”と議論を交わしました。」と述べている。
また、アメリカで長年国際ビジネスに携わっている日本人の中でも同様の意見が目立ち、「トランプ政権が自国を守るために移民政策を行うのは分かりますが、特定の国や人種や宗教で入国を規制するのはやはり人種差別であり憲法違反だと思います。」と答えているものもいる。しかし、「日本も積極的に移民を受け入れていないのでアメリカを批判する資格はないと思います。」との意見もある。
アメリカで英語を勉強した通訳者の藤野まよ子さんは、「安倍首相はアメリカと対立することを避けるためにトランプ政権の移民政策にはあえて抗議しないようにしていますが、表面上仲良くしているようにみせかけているにすぎません。」と日本政府に対する抗議とも取れる発言をしている。
今現在もアメリカで働いて暮らしている日本人は「いつアメリカ政府にビザを取り上げられるか心配で仕方がない。」との意見が目立つという。
ジル・アサカワ氏は「トランプ大統領に投票した人たちは今何を思っているのか?そして本当にこれでよかったのか真剣に考えてほしいです。」と心情を語るように述べている。
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