10月14日付
『ロイター通信』「ノーベル賞で世界の格差に再び注目」:
ノーベル賞で世界の格差が再び注目されている。収入格差や国家間の格差が、気候変動やAI革命、高齢化社会と同じくらい世界的に重要な課題であるということが示された。
経済学賞を受賞したのは、米研究者ダロン・アセモグル氏、サイモン・ジョンソン氏、ジェームズ・ロビンソン氏。スウェーデンの王立科学アカデミーは、世界の上位20%の国が、下位30%の約30倍の富を独占していると指摘、格差は途上国が豊かになってもまだ継続しているのだと警鐘をならしている。...
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10月14日付
『ロイター通信』「ノーベル賞で世界の格差に再び注目」:
ノーベル賞で世界の格差が再び注目されている。収入格差や国家間の格差が、気候変動やAI革命、高齢化社会と同じくらい世界的に重要な課題であるということが示された。
経済学賞を受賞したのは、米研究者ダロン・アセモグル氏、サイモン・ジョンソン氏、ジェームズ・ロビンソン氏。スウェーデンの王立科学アカデミーは、世界の上位20%の国が、下位30%の約30倍の富を独占していると指摘、格差は途上国が豊かになってもまだ継続しているのだと警鐘をならしている。
受賞者らは、何故国家間の不平等が生じ、継続するかのエビデンスを示した。2012年のアセモグルとロビンソン氏の著書「国家失敗の理由」では、国家制度や政治が重要なのだと指摘。古代ローマから現代のノガレス(アリゾナ州とメキシコに分断された町)に至る実例から、「開放的制度」が国家に富をもたらすと結論づけた。
そのシステムは、民主主義、法による規範、財産権保護、これらこそがわずかな支配階級が殆どのリソースや富を掌握する特別制度から開放されるという。
一方、世界レベルでは、この特別制度は健在である。世界格差報告書によると、2021年には、下位半分の人口が世界の富のわずか2%しか享受できず、逆に上位10%の富裕層が76%の富を独占している。
上位10%の国と下位50%の国の平均収入の格差は、1980年の「50倍超」から、現在では「40倍未満」にまで減少している。だが、それでもまだ格差は大きく、国家間の格差は、同じ期間でほぼ2倍に拡大しているという。
受賞した研究では、民主主義がそれほど進んでいなくても豊かになったシンガポールや中国などの地域に関する十分な説明はされていない。しかしながら、これが気候変動や人口動態への対策のように、後回しにされている課題への関心を高めたことには違いない。
更に、来月には米国大統領選挙となるタイミングで、世界最大の経済大国の民主主義が崩壊するおそれがある今、健全なシステムの重要性を示した研究が同賞を受賞したことは、尚一層重要となる。
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