7月2日付
『CNNニュース』は、日本の新札発行に当たり、これまで日本が経済支援を行っている途上国のひとつであるネパールが、現在では紙幣原料となるミツマタの主要供給元となっていると報じた。
世界ではキャッシュレス決済が進み、特に中国ではほとんど全ての商行為がデジタル決済となっている。
しかし、日本においては、キャッシュレス決済が浸透してきているものの、経済産業省データによれば、依然全取引の60%以上が現金決済となっている。...
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7月2日付
『CNNニュース』は、日本の新札発行に当たり、これまで日本が経済支援を行っている途上国のひとつであるネパールが、現在では紙幣原料となるミツマタの主要供給元となっていると報じた。
世界ではキャッシュレス決済が進み、特に中国ではほとんど全ての商行為がデジタル決済となっている。
しかし、日本においては、キャッシュレス決済が浸透してきているものの、経済産業省データによれば、依然全取引の60%以上が現金決済となっている。
そうした中、日本銀行がこの程、約20年振りに新札(正式名称日本銀行券)を発行することになった。
ただ以前と大きく違うことは、紙幣の主原料であるミツマタ(またはペーパーブッシュ)が、途上国のひとつであるネパール(編注;2024年世界GDPランキングで、対象189ヵ国中99位)から輸入されていることである。
かつてミツマタは、兵庫県や徳島県の農家で生産されていたが、少子高齢化に加えて、多くの若者が東京や関西圏等の大都市に移転してしまい、生産農家が激減してしまった。
そこで、1990年代、途上国支援の一環でネパールにおいて農業支援を行っていた(株)かんぽう(注後記)が、同国ヒマラヤ山脈の麓で自生するミツマタの大量栽培を現地農家と共同で行い、現在では日本向けの主要供給元となっている。
同社の松原正社長(2013年就任)は、“これまで日本政府がネパールを経済支援していたが、今やネパールは紙幣用特殊原料のミツマタの最大供給元であり、日本経済を助けていると言っても過言ではない”とコメントしている。
同社長によれば、ミツマタは、初夏に苗を植えて秋に枝を収穫し、数ヵ月かけて樹皮を蒸して皮をむき、洗浄・乾燥などの処理を行うため、原紙ができるまでには非常に時間と手間がかかるという。
冬季になって出来上がった原紙は、首都カトマンズに送られ、その後トラックでインド北東端のコルカタ(旧カルカッタ)に運ばれ、船で横浜港へ輸送された後、国立印刷局(1871年)によって小田原工場等で紙幣に生まれ変わる。
なお、2022年におけるネパール産ミツマタの対日輸出高は120万ドル(約1億9千万円)と全輸出高の9%以上も占めている(国際貿易データ収集・分析専門の「経済複雑性指標ウェブサイト」(マサチューセッツ工科大学内で1962年設立、2012年独立)によるデータ)。
(注)(株)かんぽう:官報や政府刊行物の販売、和紙原料ミツマタの輸入・販売等を行う1948年設立の企業。本社大阪市。
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