世界のファッションチェーン業界は群雄割拠となっている。特に、中国のオンラインストアShein(希音、シーイン、2008年設立)が急成長して、世界最大のスペイン・ZARA(1975年設立)を猛追している。そこでZARAが対抗策として、低価格競争に打ち勝つため子会社のLefties(1993年設立)店舗を急増させようとしている(後記「世界ファッションチェーン売上高ランキング」参照)。
2月22日付
『ロイター通信』は、ZARAが低価格店Lefties店舗を急増してSheinの猛追をかわそうとしていると報じた。
スペインの世界最大手ファッションチェーンZARAは、インフレーションによる収益減少を食い止めるため値上げに踏み切り、より上層客向けに軸足を置こうとしている。
ただ、業界全体をみると、特に中国のSheinの伸びが強烈で、ZARA親会社のInditexはもとより、スウェーデン大手のH&Mにとっても脅威となってきている。...
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2月22日付
『ロイター通信』は、ZARAが低価格店Lefties店舗を急増してSheinの猛追をかわそうとしていると報じた。
スペインの世界最大手ファッションチェーンZARAは、インフレーションによる収益減少を食い止めるため値上げに踏み切り、より上層客向けに軸足を置こうとしている。
ただ、業界全体をみると、特に中国のSheinの伸びが強烈で、ZARA親会社のInditexはもとより、スウェーデン大手のH&Mにとっても脅威となってきている。
そこで、Inditexが密かに進めているShein撃退政策が、同社の低価格帯販売を展開しているLefties(ZARA売れ残り品を扱うアウトレット)店舗の急増である。
現在までに、エジプト・メキシコ・ルーマニア・サウジアラビア・トルコ・アラブ首長国連邦等17ヵ国に店舗展開を図っている。
更に地元のスペインでもテコ入れしていて、既に25店舗まで増やしており、その結果2019年の顧客数350万人が2023年には500万人まで増加している。
ただ、Sheinのスペイン事業も手強く、5年前の42万1千人から2023年の520万人まで急激に伸ばしてきている。
英国の資金運用企業でInditexにも投資しているアルテミス・ファンド・マネージャーズ(1997年設立)のスウェッサ・ラマチャンドラン部長は、“ZARAの高価格商品を避ける顧客層にとって、LeftiesでZARAブランド商品が購入できることは吉報であり、低価格帯を好む購買層を取り込むのに卓越した戦法と思われる”とコメントした。
また、スペインのベスティンバー証券のパトリシア・シフエンテス上級アナリストも、“Leftiesはあまり目立たないが、低価格帯の市場で唯一優れたオンラインサービスを提供していることから、驚異的な効果を上げていると思う”と述べている。
なお、米国の投資運用企業でInditexに投資しているクリアブリッジ・インベストメンツ(1962年設立)のグレース・スー部長は、“(Shein等)低価格帯で勝負する競合先は依然としてかなり手強い”とした上で、“ただ、Leftiesが十分の収益を確保してなお事業を牽引していければ、Inditex傘下の他ブランドと共食いしない限り、更に拡大していこう”とコメントしている。
(参照)2023年の世界ファッションチェーン売上高ランキング:①Inditex(1985年設立、ZARA親会社)、②Shein、③H&M(スウェーデン、1947年設立)、④First Retailing(日本、1974年設立、ユニクロ持株会社)、⑤Gap(米、1969年設立)
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