日本は、男女平等ランキング(GGI、注後記)2023年版でも世界157ヵ国中125位と下位に低迷している。この背景のひとつに、1898年に制定された民法に定められた夫婦同姓義務について、一向に改めようとしない社会体制がある、と英国メディアが報じている。
2月20日付
『ザ・ガーディアン』紙(1821年創刊)は、日本の夫婦同姓義務化でキャリアを奪われる女性の訴えにつき報じている。
日本は、19世紀末に制定された現行民法が未だ生きていて、三十年近く前に厚生労働省傘下の法制審議会で提議された夫婦同姓義務化見直しも依然進展していない状況である。
そこで同紙はまず、東京出身で最近結婚したばかりの女性会社員のインタビュー内容を掲載した。
すなわち、彼女は、夫婦同姓義務化のため、結婚を契機に新郎の姓を止む無く選択したが、自身のパスポート・運転免許証・健康保険証・SNS上の登録名まで変更せざるを得ず、大変な労力・時間を要したと述懐した。
一番ショックだったのは、自身の戸籍上の名前も新郎の姓になり、所属している会社に旧姓を使用する旨願い出なければならなかったことだとする。
これまでのデータによると、婚姻した女性の約95%が、不本意ながら夫の姓に変更しているという。
かかる現状に対して、多くの著名人が硬直した日本の社会規範に対して声を上げている。
●日本女子大(1948年設立の私立大学)労働経済学専門の大澤眞知子教授(71歳)
・保守的な自民党及び最高裁判事が、旧態依然とした家父長制の現状維持を主張。
・姓変更を余儀なくされた多くの女性は、パスポート、クレジットカード等多くの変更手続きに忙殺されるだけでなく、旧姓で築き上げた評価等を失うような事態にも遭遇。
・日本における離婚率は英国やドイツとほぼ同じになっていることから、夫婦同姓が必ずしも家族制度の安定化を支えていない。
・現在では、ほとんどの家庭で夫婦共働きであることから、必要性に疑問のある夫婦同姓義務化を改めることで、男女平等化の促進がなされる。
●資生堂(1927年創業)の魚谷雅彦会長(69歳、2023年就任)
・女性幹部から、旧姓を使用していることで本来のID(法的な身分証明書)と違うとしてホテル滞在を断られたり、国際会議への出席を阻まれたり等の不利益を被っているとの話を聞く。
・現状では、女性にとって国際的活躍の場が失われる恐れがあるため、重大な損失。
●日本経済団体連合会(JBF、1961年設立)
・主催した諮問委員会では、旧姓で執筆した学術論文が姓変更によって認められない事態があり、自身の経歴が台無しにされたとの訴え。
・また、業務上の契約締結に当たって、会社で使用している旧姓での署名・捺印が認められなかった事態もあったとの声。
・労務行政研究所(1930年設立)の2022年調査報告によると、全企業の約84%が女性職員の旧姓使用を認めているにも拘らず、夫婦同姓義務化によって姓を変更した女性が、海外での業務含めて様々なケースで困難を強いられていることから、JBFとしても日本の社会規範是正に活動の重きを置く意向。
●JBF十倉雅和会長(73歳、2021年就任、住友化学工業会長)
・1996年時の厚労省法制審議会の提言以降、全く進展していないことを憂慮。
・女性の働き方支援を最優先課題として取り組むことを強く要望。
かかる批判の声に対して、保守派の自民党議員は、民法改正によって家族の結束を“損なう”恐れがあり、その結果、子どもたちに混乱を生じさせかねないと主張している。
また、岸田文雄首相(66歳、2021年就任)も昨年、“国民の様々な意見”があることから、“幅広い”支持を得るためには更なる議論が必要だと主張して、変更には慎重な対応を見せている。
(注)GGI:経済・教育・政治参加などの分野での世界各国の男女間の不均衡(ジェンダー・ギャップ)を示す指標。2006年から、非営利財団の世界経済フォーラムが公表。指標は経済・教育・政治・保健の4分野の14の変数を総合してつけられている。2023年指標では、1~5位が北欧及びNZで占められ、6位ドイツ、15位英国、17位(アジアトップ)フィリピン、40位フランス、43位米国、104位韓国、107位中国、そして125位が日本で先進国最下位。日本より下位は中東のイスラム諸国、アフリカの途上国のみ。
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