ニュージーランドでは、10月14日実施の総選挙で、与党・労働党(LP、1916年設立の中道左派政党)が惨敗し、野党第1党・国民党(NP、1936年設立の中道右派・保守政党)が大躍進して6年振りに政権返り咲きを果たすことになった。そしてこの程、これまでの親欧米路線より転換して、親中政策に舵を切る旨表明している。
10月20日付
『フォリン・ポリシー』オンラインニュースは、6年振りに返り咲くことになる保守連立政権が、従来の親欧米路線から親中政策に舵を切ると表明していると報じた。
ジャシンダ・アーダーンLP党首(当時37歳、2017年就任)は、ニュージーランド政治史の中で最年少の首相として、5年余りNZ憲政を牽引してきた。
特に、閣僚経験がなかったにも拘らず、2019年に発生したクライストチャーチ在モスク銃乱射事件の対応や、2020年初めに世界を恐怖に陥れた新型コロナウィルス感染流行問題における厳格な政策によって犠牲者を極小に止めたことが評価された。...
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10月20日付
『フォリン・ポリシー』オンラインニュースは、6年振りに返り咲くことになる保守連立政権が、従来の親欧米路線から親中政策に舵を切ると表明していると報じた。
ジャシンダ・アーダーンLP党首(当時37歳、2017年就任)は、ニュージーランド政治史の中で最年少の首相として、5年余りNZ憲政を牽引してきた。
特に、閣僚経験がなかったにも拘らず、2019年に発生したクライストチャーチ在モスク銃乱射事件の対応や、2020年初めに世界を恐怖に陥れた新型コロナウィルス感染流行問題における厳格な政策によって犠牲者を極小に止めたことが評価された。
ところが、今年1月、政権運営にエネルギーを使い果たしたため首相継続の余力がなくなったとして突然辞任を表明したことから、新党首となったクリス・ヒプキンス(45歳)が首相職を継ぐことになった。
そして、新首相の下で10月14日の総選挙を迎えたが、LPは惨敗(62から34議席に激減)し、代わってNPが勝利を収めることになった(34から50議席への大躍進)。
NP党首であるクリストファー・ラクソン(53歳、2021年就任)は、11月初めに右派の少数政党と組んで連立政権を発足させる見込みである。
そこで、今後のNZの対外政策をみると、大きな方針転換がなされるとみられる。
すなわち、NP報道官は、総選挙キャンペーン中に、中国の人権問題や南シナ海における軍事力拡大に難癖をつけることより、中国との貿易確保に重点を置くべきだと表明していた。
更に、ラクソン党首は、同キャンペーンにおいて、中国が推進する一帯一路経済圏構想(BRI)に“何が何でも”参画して中国のインフラ投資を呼び込む、とまで宣言していたからである。
従って、国防・機密情報共有等の枠組みである「ファイブアイズ(FVEY、注後記)」においても、左派のアーダーン首相が、同枠組みのパートナーである米国の共和党政権(2017~2021年)、英国の保守党政権(2010年より継続)、豪州の自由党連立政権(2013~2022年)、カナダの自由党政権(2015年より継続)に寄り添う柔軟な対応をしてきていたのに対して、
右派の新国民党連立政権は、逆に舵を切ることになるとみられる。
すなわち、NPは中国による総選挙への介入疑惑を軽視しているだけでなく、2021年に発足したAUKUS(豪州・英国・米国の軍事同盟)に参画する気はないと表明してきていたからである。
実際問題、NPが2008から2017年に政権を担っていたときも、FVEYにおいて他4ヵ国と違って、積極的に中国対峙を示すことはなかった。
更に、2008年には、中国が2001年に世界貿易機関(WTO、1995年設立)に正式加盟して以来最初に、西側諸国の中で率先して中国との自由貿易協定を締結していたからである。
従って、新NP連立政権は、同国最大の貿易相手国である中国との貿易促進、特に経済活性化のために必要とされる中国向け乳製品・肉類の輸出拡大に重点を置き、FVEYが重きを置く対中強硬政策には背中を向けることは必至とみられる。
(注)FVEY:米英などアングロサクソン系の英語圏5ヵ国によるUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組みの呼称。1943年に米英が立ち上げ、1950年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加盟。米国を中心に「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集、分析しているとされる。参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用する。
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