ドナルド・トランプ前大統領(76歳、2017~2021年在任)の最も手強い競争相手と目される、フロリダ州のロン・デサンティス知事(44歳、2019年就任)が5月24日に行ったツイッターのライブ配信機能を使っての大統領選立候補表明が、度重なる通信障害で惨憺たる結果となった。これに気を良くしたのか、トランプはこの程、今後共和党立候補者が増える程自身にとって追い風となると嘯いている。
5月29日付
『AP通信』は、ドナルド・トランプ前大統領が、直近で大統領選出馬表明をした共和党上院議員を歓迎すると評するだけでなく、更にもっと多くの候補者が現れる程自身にとって有利にはたらくと、自身が複数の訴追案件にまみれる中、強気な態度を貫いていると報じた。
ドナルド・トランプ前大統領は先週、ティム・スコット共和党上院議員(57歳、サウスカロライナ州選出、2013年初当選)が大統領選予備選への出馬を表明したことに対して、歓迎するとコメントした。...
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5月29日付
『AP通信』は、ドナルド・トランプ前大統領が、直近で大統領選出馬表明をした共和党上院議員を歓迎すると評するだけでなく、更にもっと多くの候補者が現れる程自身にとって有利にはたらくと、自身が複数の訴追案件にまみれる中、強気な態度を貫いていると報じた。
ドナルド・トランプ前大統領は先週、ティム・スコット共和党上院議員(57歳、サウスカロライナ州選出、2013年初当選)が大統領選予備選への出馬を表明したことに対して、歓迎するとコメントした。
同前大統領はこれまで、他の共和党員の立候補表明に対して口喧しく批判するのが常であり、特に最も手強い相手とされるフロリダ州のロン・デサンティス知事に対しては、当人が正式に名乗り出る前から猛烈に扱き下ろしていた。
しかし、同知事の5月24日に行われたツイッター配信を使っての立候補表明が、度重なる通信障害によって惨憺たる結果に終わったことから、同前大統領としてはかなり優位に立ったと考えたとみられる。
トランプ陣営のスティーブン・チャン報道官は、“デサンティス知事の立候補表明は、大いに味噌をつけてしまったものであり、他の立候補者も彼は全く手強くないとみているはずだ”と言及した。
そこで、同前大統領は、冒頭のスコット上院議員の立候補を歓迎するとの表明に止まらず、もっと多くの立候補者が増えれば増える程、自身にとって追い風となるとまで言い出している。
何故なら、トランプ陣営にとっては、多くの小粒の立候補者が増えることによって、トランプ自身を引きずり下ろす強烈な対抗馬が生れにくくなると考えられるばかりか、世論調査で2位につけているデサンティス知事の支持票を奪い取っていくことも想定されるからである。
これまで、デサンティス知事、スコット上院議員の他に、ニッキー・ヘイリィ元国連大使(51歳、2017~2018年在任)、エイサ・ハッチンソン前アーカンソー州知事(72歳、2015~2023年在任)、IT富豪投資家のビベック・ラマスワミ氏(37歳)、ラジオ番組ベテラン司会者ラリー・エルダー氏(71歳)が正式に出馬表明している。
そして、今後数週間内に、クリス・クリスティ元ニュージャージー州知事(60歳、2010~2018年在任)、マイク・ペンス前副大統領(63歳、2017~2021年在任)、ダグ・バーガム現ノースダコタ州知事(66歳、2016年就任)及びフランシス・スアレス現マイアミ市長(45歳、2017年就任)がそれぞれ立候補を正式表明するとみられている。
多くの共和党員は、トランプ中心の選挙戦が続くとしても、最終候補に残れないと判断して撤退する候補が別の強力な候補の支持に回って激戦が続くことを期待しているとみられているが、万一最終的にデサンティス知事が2番目の候補として残った場合、他の撤退候補が彼を支持して反トランプとして結束するかどうか甚だ不透明である。
何故なら、デサンティス知事自身が他の候補と友好な関係を築こうとしていないばかりか、ヘイリィ元国連大使を筆頭に、同知事に対する非難の声をより強く上げ始めているからである。
例えばスアレス市長は、訴追案件を抱えるトランプ前大統領を批判することをしない代わりに、デサンティス知事に対しては、自身を含めてもっと同州の共和党員の高官・政治家と良好な関係作りを行うべき“組織的な責任”を有していると非難している。
更に同市長は、ウォルト・ディズニー・フロリダ(WD、1971年開園)との訴訟事件(注後記)等について善処すべきであり、“さもないと、同州の共和党への大口寄付者が考えを変えてしまう恐れがある”とも強調している。
(注)WD対デサンティス事件:今年4月下旬、WDが、米憲法で保障されている表現の自由を侵害したとして、デサンティス知事他州政府高官を同州連邦地裁に提訴した事件。同知事らは、昨年3月に制定した「フロリダ州の教育に対する親の権利法(フロリダ州の公立学校では、幼稚園から小学3年生までの間に性的指向や性同一性について議論したり授業で指導したりすることを禁止する法律)」に関し、WDがストライキ等を含めて同法に反対したこと等から、今年4月下旬、WDの拡張計画に関わる管理権を剥奪するとの報復措置を断行していた。
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