フカヒレは、唐(618~907年)の時代から食されていて、日本でも江戸時代末頃からフカヒレ生産が本格化し、今や世界有数のフカヒレ生産国であり消費国となっている。しかし、サメの多くが絶滅危惧種に指定される中、英国を中心にフカヒレ取引の全面禁止措置が広がり始め、ついに隠れたフカヒレ供給元であった米国でも全面禁止措置法が施行されようとしている。
12月16日付
『AP通信』は、「米国、ついにフカヒレ取引の全面禁止実施で自然保護活動家が歓迎」と題して、米議会が制定したフカヒレ取引の全面禁止法案について、ジョー・バイデン大統領(79歳、2021年就任)が遂に署名して同法を成立させることになったと報じている。
米国ではまもなく、大金を生み出すフカヒレ取引の全面禁止措置が講じられることとなり、自然保護活動家はこれで数百万匹のサメが保護されると歓迎している。
フカヒレは中国やアジア諸国で珍味ともてはやされ、米国で捕獲されたサメのフカヒレも多く取引されてきていた。
何故なら、米国では20年余りも前から、シャーク・フィニング(捕らえたサメのヒレだけを切り取って、残った体をそのまま海に捨てる行為)を船上で行うことを禁じてきただけであったため、取引されるフカヒレが禁止行為に当たるものかどうか不明であることから、毎年世界で取引される7,300万匹分のフカヒレの多くが米国産で占められていた。
毎年、米国の多くの港では、船舶検査の結果、中国やアジア諸国向けの数千もの未申告フカヒレが押収されている。
そこで、海洋自然保護活動家らが長年訴えてきた主張を踏まえる形で、米上院・下院でそれぞれ策定されたフカヒレ取引を全面禁止する措置法案が、近々バイデン大統領によって署名・成立される見込みとなっている。
当該法案によると、これまで禁止されていた米国に止まらず、米国以外で捕獲されたサメから取ったフカヒレの売買のみならず所有することも禁止されることになる。
海洋自然保護活動団体オセアナ(2001年設立、本部ワシントンDC)のギブ・ブローガン組織運動代表(2014年就任)は、“これで、米国埠頭でフカヒレが取引されることはなくなる”とし、“これを契機に、世界中でフカヒレ取引が全滅させられるようになることを期待している”と語った。
しかし、他の専門家らは、当該法が施行されても、世界でのフカヒレ取引にはほとんど影響が及ばず、ただ米国のサメ漁に関わる漁師たちを失業に追い込むだけに止まろう、とコメントしている。
例えば、サラソタ(フロリダ州)の海洋研究所モート・マリーンラボラトリー(1955年設立)のロバート・ヒューター名誉上級研究員は、“米国のサメ漁関係者は、漁獲量は小さいが持続可能性を考え良く管理されており、乱獲気味の他国の漁関係者に絶滅危惧種に指定されているサメ漁の持続可能性を慮るよう訴えてきた”とした。
その上で、“しかし、今回の法整備によって、きちんと対応してきた米国漁師の仕事が奪われ、その分他国の乱獲を厭わない漁師たちにとって追い風となってしまう恐れがある”と言及している。
ニュージャージー州のあるサメ漁師も、“米国の漁師は皆正直な者が多く、今回の立法で廃業に追い込まれる恐れがある”とした上で、“南シナ海やその他世界中で、違法とされるシャーク・フィニングが横行している”と非難した。
しかし、自然保護活動家らは、米国が率先して厳しい対応を取ることによって、他国にも良い波及効果となるはずだと主張している。
例えば、象牙取引禁止を米国が主導したことから、アフリカ像の乱獲を防げるようになったとし、フカヒレでも同様な影響力が期待できる、と付言している。
なお、乱獲の影響で、1970年代以降サメの全種類のうち71%も絶滅している。
スイス本拠の国際自然保護連合(1948年設立)の調査によると、目下確認されているサメの種類は500種余りであるが、このまま乱獲が進めば3分の1以上が絶滅する恐れがあるとされている。
そこで、先月下旬にパナマで開催された国際野生動物保護会議において、出席した多くの国が、特定90種余りのサメについて、フカヒレのみならず魚肉のために捕獲及び取引することを禁止する決定に賛同している。
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