2008年北京オリンピックで悲願の金メダルを獲得した日本女子ソフトボールチームにとって、最大のライバルは、何といってもオリンピックの他、世界選手権等における常勝軍団の米国チームである。その米国チームが、折からの“ブラック・ライブズ・マター運動(注後記)”で大きく揺れている。すなわち、ナショナルチームに選抜されている数少ない黒人選手が所属するテキサス州チーム(米国内プロリーグを構成する5チームのひとつ)において、監督が上記運動参加者を犯罪者扱いしているドナルド・トランプ大統領を全面支援するようなツイートを発信したことに端を発し、同チーム所属の18人全員が退団してしまうという事件が発生している。
6月29日付
『ESPN』(1979年設立のディズニー傘下のスポーツ専門チャンネル):「ドナルド・トランプ大統領支持をツイートした監督に反発して所属チームを飛び出したソフトボール選手が新たに“これこそが我々のチーム”を組織」
1週間前に、所属するテキサス州のプロソフトボールチーム、スクラップ・ヤード・ドーグス(SYD、ドーグは仲間を意味するスラング)を飛び出した18人の選手が6月26日、新たに“これこそが我々のチーム(TIU)”を立ち上げた。...
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6月29日付
『ESPN』(1979年設立のディズニー傘下のスポーツ専門チャンネル):「ドナルド・トランプ大統領支持をツイートした監督に反発して所属チームを飛び出したソフトボール選手が新たに“これこそが我々のチーム”を組織」
1週間前に、所属するテキサス州のプロソフトボールチーム、スクラップ・ヤード・ドーグス(SYD、ドーグは仲間を意味するスラング)を飛び出した18人の選手が6月26日、新たに“これこそが我々のチーム(TIU)”を立ち上げた。
中心メンバーは、数少ない黒人選手のケルシー・スチュワート内野手、及び白人選手のオーブリー・マンロー捕手で、チームの趣旨はソフトボール界における黒人選手の支援であるとする。
実は先週、SYDのコニー・メイ監督が、チームのツイッターアカウントに、ドナルド・トランプ大統領の名前を冠して、“チーム全員起立して国旗に敬意”と掲載した。
同大統領は、“ブラック・ライブズ・マター運動”の参加者をならず者呼ばわりしており、米フットボールリーグや大リーグのみならず、女子プロソフトボールリーグ(NPF、2004年に5チームで組成)内においても非難されていた。
そこでSYDチーム選手が反発したが、同監督から選手宛の陳謝の電話において、“オール・ライブズ・マター”と火に油を注ぐ言い訳をしたことから、スチュワート選手及びもう一人の黒人選手キキ・ストロークスがチーム退団を決意したところ、他の16人の白人選手も一斉に退団することになった。
スチュワート選手は『ESPN』のインタビューに答えて、“圧倒的に白人選手ばかりのソフトボール界において、結局監督は黒人(選手)がどれ程苦労しているか理解しようとしなかった”と糾弾した。
ただ、ソフトボールを辞める気はさらさらなく、また、支援してくれる企業、ファンそして仲間のために、何とか活動は続けたいとして、マンロー選手や支援者と相談して、TIUを立ち上げたものである。
立ち上げに当たってマンロー選手は、“チームを飛び出したこと等で、関係者やファンに迷惑をかけたことを陳謝したい”とした上で、“しかし、黒人選手の頬を打つような行為は看過できず、また、ソフトボールを続けることで彼女らを支援したい”と決意表明している。
なお、SYDの長年のライバルのフロリダ州USSSAプライドも彼らの行動を支持していて、早速6月29日、TIUとの初試合開催に協力した。ただ、結果は1対3で、TIUに初勝利をプレゼントしてしまっている。
一方、SYDは、東京オリンピックに出場予定の米国ナショナルチーム選抜の11人を含めた全員が退団してしまったことから、チームの存続は風前の灯火である。
(注)ブラック・ライブズ・マター運動:アフリカ系米国人のコミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動。特に、白人警官による無抵抗な黒人への暴力や殺害、人種による犯罪者に対する不平等な取り扱いへの不満を訴えている。
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