5月4日付GLOBALi「米メディア；日本の新規石炭火力発電所建設計画推進を批判」の中で報じたとおり、日本のエネルギー業界がこれまで長らく推進してきた、海外の石炭生産プロジェクトへの投資や新規石炭火力発電所建設計画を取り止める方針を打ち出しているが、既にコミットしている国内及び一部途上国での新規石炭火力発電所建設計画は予定どおり進める意向との姿勢について、米メディアが批判している。しかし、国際的金融取引を推進する本邦金融大手は、環境問題で世界からの批判の標的にされたくないとして、挙って石炭火力発電所案件への融資を停止するとの方針を発表している。

5月12日付『ロイター通信』：「三井住友フィナンシャルグループ、新規石炭火力発電所建設計画への融資を全面的に停止すると発表」

日本の大手金融機関の一社である三井住友フィナンシャルグループ（SMFG、注１後記）が5月12日、今後予定されている石炭火力発電所の新設・拡張案件への融資を全面的に停止すると発表した。

同社はこれまで、従来設備より環境負荷を少なく石炭が燃焼される超々臨界圧発電（USC）への融資については、融資の可能性があるとしていた。...

5月12日付『ロイター通信』：「三井住友フィナンシャルグループ、新規石炭火力発電所建設計画への融資を全面的に停止すると発表」

日本の大手金融機関の一社である三井住友フィナンシャルグループ（SMFG、注１後記）が5月12日、今後予定されている石炭火力発電所の新設・拡張案件への融資を全面的に停止すると発表した。

同社はこれまで、従来設備より環境負荷を少なく石炭が燃焼される超々臨界圧発電（USC）への融資については、融資の可能性があるとしていた。

しかし、世界で議論が高まっている環境問題より、元凶のひとつとされる石炭火力発電所の削減への圧力気運に鑑み、日本の金融大手で初めて新設及び拡張案件への融資停止決定に踏み切ったものとみられる。

かかる方針発表以前の先月、菅義偉首相（72歳）が温室効果ガス発生量を従来目標の2倍近くまで削減すると発表しており、産業界にも同様の脱炭素政策追随が求められていた。

同社のコーポレート・サステナビリティ推進部の武田達也部長はオンラインでのインタビューに答えて、“精査の結果、USC発電でも二酸化炭素発生量を劇的に減らすことは不可能と判断したため、これも含めた全ての石炭火力発電への融資案件を停止することとした”と言及した。

なお、同社の最強のライバルである三菱UFJフィナンシャルグループ（MUFG、注２後記）は先月、既存石炭火力発電所の拡張計画への融資は停止すると発表している。

（注１）SMFG：2002年、三井グループ傘下の銀行群と住友グループの銀行群とが合併して誕生。総資産で日本の2位。グループ傘下の銀行・証券等は、国内では三井住友・・とし、海外ではSumitomo Mitsui・・と名乗っている。

（注２）MUFG：2001年、東京三菱銀行・三菱信託銀行・日本信託銀行が合併して誕生。総資産で日本第1位。