フランスは昨年、外を歩いている際に遭遇するセクハラ行為の件数が、3000件に上った。そこで政府は、女性が安心して道を歩くことができるように、街中での「セクハラ・レッドゾーン」の地図を作成して撲滅活動の為に活用していくことを明らかにした。
仏ニュースサイト
『LCI』によると、マルレーヌ・シアパ内務大臣付市民権担当大臣は仏紙「20ミニッツ」のインタビューで、女性が誰にも邪魔されずに道を歩ける空間を作るという政府の目標を明らかにした。フランス語で「セクハラと無縁のコミュニティ」を意味する言葉の頭文字を取った「QSR」を作ることを発表した。今年の8月からは、毎年更新されることになる「ストリートハラスメント指標」というものを発表し、「ストリートハラスメントのレッドゾーン」を確認できる地図を作成して根絶する方法を整備していくという。
ストリートハラスメントの「レッドゾーン」は、被害届や苦情、警察の報告書、関係団体からのフィードバックに基づいて、フランス全土でのセクハラの頻度などがマッピングされ、特定されていく。
レッドゾーンでは、例えば「私服の警察官が、ハラスメントの犯罪行為が見られたときに、不意打ちで介入し、罰金を科すことができるようになる」という。なお、ダルマナン内相が先日発表した警察1万人の増員のうち、2000人がこのプロジェクトのために動員され、国民を守る任務に従事する見通しだ。
仏誌『マリアンヌ』は、こうした計画について、「意図は素晴らしいものの、政治的宣伝が本質よりも優先されてしまった」と批判している。
同誌は、「2018年8月に、性差別的な犯罪行為があった場合、加害者は、750ユーロ(約10万円)の罰金が科せられ、被害者が15歳未満であった場合など、より重い犯罪行為の場合には1,500ユーロ(約20万円)の罰金が科せられるという法律が作られている」ため、「QCR」という若者を意識したネーミング付けは必要あったのだろうかと疑問を投げかけている。また、政府は若者を、見栄えの良い見せ方をしなければ興味を持ってくれない幼稚な層として認識しているのではないかと指摘している。
さらには、レッドゾーンでの特別対策という考え方にも議論の余地があると指摘している。同誌は、レッドゾーンで取り締まりの対象となる犯罪行為は、その他の地域では見逃されることになってしまうが、それでよいのかと疑問を投げかけている。
何よりも、どういう基準に基づいて犯罪行為とみなされるのかを市民や取り締まる警察に対してより明確化していくことの方が優先的に取り組むべきではないかと指摘している。
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