バルカン半島の小さな共和国モンテネグロは、これまでに建設された中で最も高価な高速道路の一つを建設している。しかし新型コロナウイルスのパンデミックの影響で経済的に大きな打撃を受け、中国に借りている10億ドル(約1千億円)の返済について欧州連合(EU)に支援を求めている。
アメリカの政治ニュースサイト
『ポリティコ』によると、「欧州委員会は、EU加盟候補国であるモンテネグロが、債務危機に陥っている高速道路プロジェクトに対する中国からの融資について、モンテネグロ政府の支援要請を拒否した。」
「同国の複数の政府高官がここ数週間、モンテネグロの債務全体の4分の1に相当するこの融資の返済を支援するようEUに要請し、西バルカン半島における中国の影響力をあらわにしていた。...
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『ポリティコ』によると、「欧州委員会は、EU加盟候補国であるモンテネグロが、債務危機に陥っている高速道路プロジェクトに対する中国からの融資について、モンテネグロ政府の支援要請を拒否した。」
「同国の複数の政府高官がここ数週間、モンテネグロの債務全体の4分の1に相当するこの融資の返済を支援するようEUに要請し、西バルカン半島における中国の影響力をあらわにしていた。」しかし、「欧州委員会はその要求に応じなかった。」
EUのピーター・スタノ外交政策スポークスマンは、定例記者会見で「EUはすでにモンテネグロの最大の財政支援者であり、最大の投資家であり、最大の貿易相手国でもある。我々は彼らに寄り添い続けるが、彼らが第三者から受けている融資を返済することはない。」と述べている。
『ポリティコ』は、今回のEUの決定は、中国の国営金融機関である中国輸出入銀行が、モンテネグロが所有する資産を支配する道を開く危険性があると指摘している。中国からの融資は、未だに完成していない高速道路プロジェクトの費用の85%をカバーしている。モンテネグロの前政権は2014年にEUの助言に反して中国の融資を受け入れていた。
なお、「スリランカ、パキスタン、ジブチなどの国々は、中国の一帯一路構想の下で魅力的な融資を受けているが、現在ではその返済を迫られており、中国の影響力にさらされる危険性がある。」という。EUのスタノ外交政策スポークスマンは、「EUは、中国の一部の投資が社会経済的・財政的に及ぼす影響、あるいは中国の一部の投資が国にもたらす負債について懸念を抱いている。なぜなら、マクロ経済の不均衡や債務依存のリスクがあるからだ。」ともコメントしている。
英『ファイナンシャル・タイムズ』によると、シンクタンク「Belgrade Fund for Political Excellence」の外交政策アナリスト、ステファン・ウラディサヴリエフ氏は次のように述べている。「モンテネグロをはじめとする西バルカン諸国が、中国の影響力増大に対抗するためにブリュッセルに向けてこのような働きかけを行ったのは初めてのことだ。」と述べている。
モンテネグロは現在「インフラについては、中国に依存している。地政学的な観点から見て十分懸念すべき状況である。また、重要な観光産業はロシアなどの非EU諸国からの訪問者に依存している。モンテネグロは、EUの同盟国とより密接に結びつかなければならない。経済との連携も必要だ。」と指摘している。
2006年にセルビアから分離して独立国となったモンテネグロは、伝統的にモンテネグロへの重要な投資家だったロシアからの強い反対を押し切り、2017年にNATOに加盟した。2024年までにEUに加盟することを望んでいる。
『ファイナンシャル・タイムズ』は、中国はインフラやエネルギープロジェクトを通じてバルカン半島に着実に進出してきたが、最近では新型コロナウイルスをきっかけに「ワクチン外交」を展開しており、モンテネグロにシノファーム社製のワクチンを3万回分寄付し、セルビアには数百万回分を販売したとも伝えている。
シンクタンクの欧州外交評議会は2月の報告書で、「中国は西バルカン半島の一部の地域で、政策の選択、政治的態度、広報に対する実際の影響力を獲得しようとしている」と述べている。
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