パキスタンは、親中政策を率先して推進しており、中国の「一帯一路経済圏構想(OBOR)」一環の中国・パキスタン経済回廊(CPEC、2017年成立)に基づき、中国資本によるインフラ建設を着々と進めている。そうした中、中国支援によって新たに建設されたカラチ第2原発(K-2)がこの程稼働を開始した。なお、カラチ第3原発(K-3)も中国支援で既に建設が進められている。
3月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「パキスタンの中国建設の原発が稼働開始」
パキスタンは3月18日、中国資本によって建設された1,100メガワット(約28万世帯分の出力)の原発の稼働を開始した。
パキスタン原子力委員会(1956年設立)のシャヒード・リアズ・カーン報道官は、同国南端のカラチに新規に建設された原発K-2が稼働したと発表し、同国にとって必要な“信頼度が高くしかも費用対効果のある”発電施設だと強調した。...
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3月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「パキスタンの中国建設の原発が稼働開始」
パキスタンは3月18日、中国資本によって建設された1,100メガワット(約28万世帯分の出力)の原発の稼働を開始した。
パキスタン原子力委員会(1956年設立)のシャヒード・リアズ・カーン報道官は、同国南端のカラチに新規に建設された原発K-2が稼働したと発表し、同国にとって必要な“信頼度が高くしかも費用対効果のある”発電施設だと強調した。
更に同報道官は、“K-2の稼働によって同国の原発による出力がほぼ2倍となり、電源構成における原発の占める割合を大幅に改善する”とし、同国の経済力を確実に向上させると付言した。
パキスタンはこれまで5基の原発を保有していたが、合計1,350メガワット(約34万世帯分)、同国総出力の僅か5%に過ぎなかった。
そのうちの4基は同国中東部チャシュマにあり、全て中国支援で建設されたものである。
もう1基はカラチ第1原発で、1972年にカナダの支援で建設されたが、出力は僅か80メガワット(約2万世帯分)である上、ほぼ寿命に差し掛かっている。
そこで、今回稼働したK-2、及び同じく中国支援で建設中のK-3(出力は同じく1,100メガワット)がフル稼働になり次第、上記原発は廃炉とする計画である。
K-2及びK-3は、中国が開発した第3世代の原子炉“華竜1(ホアロン)”で、各々2015年、2016年に建設が開始されており、総費用100億ドル(約1兆900億円)は全て中国側が支援している。
カーン報道官によれば、同原子炉は“格納容器が二重”になっているため、事故や破壊行為に遭っても、放射能を封じ込めることが可能だとしている。
同報道官は、“例えばボーイングジェット機が突っ込んできたとしても、外壁部が損傷するだけの超強度設計になっている”と付言した。
更に、両基は海面より12メートル以上高い場所に設置されているので、津波にも対応できるとする。
しかも、両基とも国際原子力機関(IAEA、1957年設立)基準を満たしているという。
両基の寿命は60年で、現在チャシュマ原発4基に中国から核燃料供給を受けているように、この両基用の核燃料供給も中国によって保障されている。
なお、パキスタンは、2030年までに原発の総出力を8,800メガワット(約220万世帯分)に、更に2050年までに4万メガワット(約1千万世帯分)に増強する計画である。
一方、原発建設の他、パキスタン国内では6年前から中国支援による石炭火力発電所9基の建設が進められていて、更に追加建設計画もあり、同国の長年の電力不足問題を効果的に克服される見込みである。
これらのインフラ建設は、中国が推進するOBOR構想下のCPECに基づく開発計画で、中国が海のシルクロードとしてアラビア海(インド洋)への出口として重要視している、同国南西端のグワダル港増強及び中国~同港までの道路建設も含まれている。
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